Step 27 ページ29
【sideA】
あの後、他のお店も見てみたが欲しいものはなく。
私たちは帰りの電車に乗っている。
普通の人なら感じないような揺れを感じてしまい、震えを抑えることに必死だ。
『うぐぅ……』
「大丈夫、じゃなさそうだね。なら……今度は私の番かな」
カナヲが笑い、手を握ってきた。
行きの煉獄先生の手とはまた違った、すべすべの女の子の手だ。
緊張ではなくて、安心感が湧き出てきた。
もちろん、行きも煉獄先生が和ませてくれて緊張は解れたんだけど、この気持ちの違いはなんだろう。
異性とも同性とも触れたことは少ない。
友達がいないとかそんなのではなく、あまり学校以外で話すことがないからだろうか。
車内に揺られながら、電光掲示板を眺める。
[○○駅 ○○station]
の表示に切り替わった。
この次……だっけ。
煉獄先生をちらっと見ると、変わらない顔で前を見すえている。
……こちらに気づいたようで、煉獄先生が口を開いた。
「今日は二人とも楽しかっただろうか!」
『……とっても。!』
「もちろんです。ありがとうございます」
私たちの返事を確認してから、煉獄先生は「俺もだ!」と続けた。
よかった。
みんな楽しい一日になったみたい。
笑みを隠しきれず、ふふっと笑う。
「あ、ここですね。降りましょう、二人とも」
カナヲが言った途端に電車はゆっくりと止まり、扉が開く。
行きと同じように、改札を抜け、ホームから離れた。
「では、また明日学校で会おう!!」
2人と別れ、帰り道をゆっくりと歩く。
手を見る。
離れても、感触は残っている。
私はもう冷めてしまった手をぎゅっと心臓のあたりに当てた。
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作者名:夢世 | 作成日時:2020年11月22日 23時