Step 23 ページ25
【sideA】
電車の中は意外とすいていて、席を確保出来た。
座れる有難みがすごい。。
「うむ、調べてきた甲斐があった! この車両はこの時間だと混みにくいとアプリから読み取ったからな!」
『ひえ、あ、ありがとうございます……』
煉獄先生は紳士なのだろうか。
少しくらい抜けててもいいんじゃないかってくらい完璧だ。
クソデカボイスも少し抑えめになっていた。
そりゃあ、電車の中ですから。
「もうすぐ発車するようですね。発車メロディが聞こえます」
「栗花落少女、教えてくれて助かる。そこの座席に座ろう!」
私たちは扉の向こうの席に座る。
扉がしまり、アナウンスが聞こえた。
いよいよだ……っ。
特有の音が聞こえ、それは徐々にガタンゴトンといった音に変わる。
「A、大丈夫?」
『だいじょう……ぶっ』
「……手、震えてる」
『う……』
カナヲに心配をかけまいと思い強がったけど、効果はなかったようだ。
一瞬にして、怖がってることがバレてしまった。
言葉ではなんとでも言えるのに、身体はどうやら素直に感情を表してしまう。
煉獄先生は、ずっと見ていたのかむむむと考え込んだ。
そして閃いたように目を見開く。
眼光がつよいから、、そうしなくても伝わりますよ先生。
「ふむ。なら、こうすればよい」
その言葉が聞こえ、私の震える手に温もりが宿った。
その手に目をやると、ごつごつとした男の人の手があった。
しっかりと握りながらも力加減は考えてくれている。
反対側に座っているカナヲはまじまじと見ていた。
煉獄先生に、手を。。。
私は今度は緊張でいたたまれなくなって、目を強くつぶった。
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作者名:夢世 | 作成日時:2020年11月22日 23時