Step 1 ページ3
【sideA】
学校に行く途中の小さな闘い。
手には傷一つない定期。
1年前の春、めでたく高校生になった私に母がくれた物だった。
でも、未だ私はこの定期を使ったことがない。というより、使えない。
だって、、。
電車、特に列車がこわいから。
乗れない、し、まず見たくもない。
詳しくは脳が教えてくれないのに、この記憶だけ残っているんだ。
切断された車両。貫通した胴体。修羅の生物。
列車、もしくは電車を見ると、これが頭に過り、身体が動かなくなってしまうのだ。
だから、今日も乗れずに歩いて行く。
私が通う高校、キメツ学園は電車で行けば早く着くってだけで別に歩いて行ける距離だ。30分近くかかるけど。
ごめんなさい、お母さん。
今日も定期使えなかった。わざわざ、綺麗な定期入れも買ってもらったのに。
心の中で謝り、定期をそっとポケットに入れる。
闘い、なんて言ったけど今まで勝てたことは一度もない。
私の中の恐怖心は、小さいようで大きいみたいで。
『いつになったら克服できるんだろうな』
私は小さく呟き、ため息をついた。
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作者名:夢世 | 作成日時:2020年11月22日 23時