ねぇ、こっち向いてよ （２）

６８. ページ23

・













「Aさん？」





目覚めて隣を見ると、Aさんの姿はない


その代わり、トーストのいい匂いがする








匂いにつられてリビングの方に行くと、





『おはようございます』


そう言って微笑むAさん










朝からこうして2人でゆっくり出来ていることが夢みたいで

幸せだな、なんて考えながらAさんの方を見ると、目が合った






『なんか、変な感じですね』



ふふって笑うAさんの笑顔を見て思わず頬が緩む












情報番組をなんとなく見ながら、他愛もない会話をして


こういう普通の朝が、一人暮らしの僕には本当に新鮮で、幸せに感じる











パンを1口サイズにちぎって、Aさんの口元に持っていくと恥ずかしそうに、でも素直に口を開けて





『恥ずかしい……』


なんて言いながら顔を手で覆う













『長谷川さん、甘いです』


「甘い？」


『なんかもう、甘々で溶けちゃいそう……』










手で覆われた頬は、その指の隙間からでも赤くなっているのが分かった















・

６９.→←６７.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す