MY PRAYER

５. ページ7

・









私のところからは丁度見えないそのお客さんの顔




だけど、コーヒーを飲む後ろ姿が様になっていて、

なんとなくオーラがある気がするのは……ほくちゃんに似てるから？









お店の閉店時間になり、掃除を始めると、こちらの様子を伺いながら慌ててコーヒーを飲み干すお客さん



すみません、急かしちゃって…

なんて思いながらも、片付けはしないといけないので作業を進める









「すみません、ギリギリまで」



コーヒーを飲み終わってすぐ

マスクをまだしていない状態で振り返ったお客さんの顔に、息が止まる









ほん、も…の？










こんな距離で見間違えるはずがない


そこに居たのは、間違いなく私の好きな人だった









「ありがとうございました」



近くで聞く大好きな人の声







バイト中なのに

接客中なのに




それどころじゃなくて、お会計をしているときも、カタカタと手が震える









『こちら、３００円のお釣りです』




声も震えているのが、自分でも分かった









そんな私のことを見てクスッと笑ったのはほくちゃんで

「俺のこと、分かりますか？」

優しい表情でそう言う





分からないわけがない


こんなに好きなんだもん








『ほ、ほく、……吉野さん、ですよね』



危ない…！

いつもの癖で " ほくちゃん " って呼んじゃうところだった








「気付いてくれてたんですね、ありがとうございます」


『そんな…』


「遅くまですみません。また、来ますね」









カランカランというドアの音だけが、この部屋に響き渡っていた









・

６.→←４.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す