42. ページ45
・
『ごめん、』
「ううん、落ち着いた?」
特段に優しいわけじゃない
欲しい言葉を掛けてくれるわけでもない
でも、なんだか心地が良かった
壱馬には持病だって言っているけど、本当は病気にかかってしまったこと
余命宣告されていること
先が、長くないこと
他人だと思えば、何でも話せて
今まで誰にも話せていなかったから、少し気分が楽になった
癌だと言うことは言わなかったけど、
慎くんは私の話を全部しっかり聞いてくれていた
「壱馬に病気だって言わないのは、夢を応援したいから?」
『うん、そうだよ』
「そっか、」
応援したいって気持ちは、慎くんも同じなんだろう
私のこの答えに深く頷いた
「いつ?」
『もうあと、半年ちょっと』
「辛く、ない?」
『辛いよ、もちろん』
「なら、話した方が…壱馬もきっと、分かってくれる」
『ううん、言ってしまったら壱馬はきっと、、』
「自分の夢を諦める、って?」
だって、そうでしょ?
俺がずっとそばにいるから、なんて言って、
例え合宿中でも飛んで帰って来ちゃいそうだし
『想像、出来ちゃうんだ。壱馬がそう言って自分を犠牲にする姿が』
「だから、別れるってこと?」
『うん、それだけなの。私が壱馬にしてあげられることは』
「壱馬、傷つくよ」
『私のワガママだよね、分かってる。でも、……壱馬には幸せになって欲しい』
慎くんはそれ以上何も言わなかった
沢山考えた
どうしたらいいのか、
でも、" 別れる " っていう答え以外に辿り着けなかった
これも、運命なのかもしれないね
「俺からは何も言わないし、邪魔もしない」
『うん、』
「何かあったら相談してくれていいよ」
『うん、』
「でも、後悔だけはしないようにね。」
優しいけど、温かいけど
強い口調でそう言って、慎くんは帰って行った
" 後悔 "
そんなの、するに決まってる
でも、こうするしかないの
せめて貴方だけは
_________幸せに、なって
・
877人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:檸檬 | 作成日時:2020年4月7日 23時