If...

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｢...っ、Aさん。すみません｣




泣いているのは私だけじゃなかった


北人の目にも、涙が溜まっていた









｢...すみません、怖い思いさせて｣




さっきまで私の手を握っていた北人の手は、

私の背中へと回り








｢もう大丈夫です｣



私の身体も不安も全部、ゆっくりと包み込んだ









身体がゆっくりと離れる





そして、一瞬柔らかい笑顔で笑ったかと思えば、

その顔は直ぐにまた強ばった









｢ここ、カメラありますよね？｣


『うん』


｢逃げないと、｣





北人は、持っていた鞄から黒い上着を取り出すと、それを私に着させた









そして、地図のようなものを広げて



｢こっちです、行きましょう｣









薄暗い裏道のような所に着いた時
私の手を引いて歩いていた北人が、急に立ち止まった




｢何があっても、大きな声は出さないでください｣


『うん』


｢バレたら大変なんで｣


『分かった』









北人が持っている地図には、この建物のことが事細かに記されているのだろうか

迷わずに進んでいく









そして、薄暗い道を抜けて少し広い場所に出た時、

思わず声が出そうになった






だって、そこから見える場所には、頭から血を流している壱馬が見えたから








息が止まった



心のどこかで、壱馬たちは大丈夫だって思っていた気持ちが、
一瞬で消え去った







そんな私の心を読むかのように、

北人の、私の手を握る力がギュッと強くなった









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