異世界に夢野先生がいらっしゃった件について。 (ページ6)

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守銭奴とユメノ先生ページ6

___ユメノゲンタロウ。学年は3年生で、現寮長である僕もよく知る元オクタヴィネル寮生。
ユニーク魔法は『模倣』。なんでも、他者のユニーク魔法をコピーすることが出来るとか。

なんだそれは。超優良物件(最高に使える)じゃないか。

❋

僕の名前はアズール・アーシェングロット。ナイトレイブンカレッジのオクタヴィネル寮長であり、モストロ・ラウンジの経営者である。

「こんにちは。ユメノさん」

図書室で一人ただずんでいた彼の背後から声を掛けると、彼は若干の笑みを浮かべてこちらを振り返った。間違いない。この笑みは、同業者の笑みである。

「おや、……珍しい客人かと思えば、オクタヴィネル寮長のアーシェングロットくんじゃないですか」

どうかしましたか、と続ける彼の手元を見るに、どうやら何かの作業中だったようだ。……見慣れない言語の羅列が目に入る。茶色の枠線が縁取られたその紙にも見覚えがなかった。

「もしかしてお忙しかったですか？すみません」

「いえ、大したものでもないですよ。趣味の一環に過ぎませんので」

「そうですか。……ところで、その文字は？初めて見るものだったので。外国語ですか？」

僕がそう尋ねると、彼は面白いものを見つけた、とでも言わんばかりに愉快そうに笑った。……なんだろう、妙に胸がざわざわする。非常に不愉快だ。
そんな僕の心情など知る由もなく、目の前の男は、随分と態とらしく口を開いた。

「アーシェングロットくんにも知らないことはあるんですね。なるほど……あぁ、質問にはちゃんと答えないといけませんね。何せ小生、慈悲の精神に基づく寮にいたらしいですから」

何故こうも他人事のように己を語るのだろうか。何が"いたらしい"だ。理解出来ない。
それに、小馬鹿にするような前置きも要らないだろう。一人合点をするんじゃない！腹立たしい、ああ、話しかけるんじゃなかった___

「__これらの文字は小生の母国語です。小生の出身国、少しばかり特殊でして。みなさんが使うような文字を書く者は、非常に希少だったのですよ。因みにこの部分は『明日の月は綺麗でしょうね』と読みます」

「なるほど……明日の月は綺麗でしょうね、ですか」

「ご存知で？」

「いえ。ただ、『月が綺麗ですね』というフレーズに似ていたものですから」

そう言うと、彼は不思議そうに瞬きを繰り返した。

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