マイ・テリトリー (ページ16)

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「それより、彼氏さんのこと好きなの？」

彼は突然、話の内容を変えてきた。

「好き」その言葉は、昔から嫌いだった。

『……。』

私は分かりやすく態度を変えた。

心配して欲しいわけでも、慰めて欲しいわけでもない。

そんな弱い女とも同じにしないで。

「好き、じゃないの？」

それは私を追い詰めるような言い方ではなく、なぜか通じ合っているような気がした。

『変だと思わないの…？』

「逆になんで変だと思うの？」

初めてだった。

社会的にもあてはまらない私と似た彼のような人は。

私は目の下が熱くなり、涙が溢れそうになる。

『私、ふつう…？』

そう言う私の声は、とても震えていて今にも消えそうだった。

彼は私を真っすぐに見つめ、「ふつうだよ」と呟いた。

きっと他の人なら「ふつう」という平凡すぎる言葉なんて言われても嬉しいとも思わないだろう。

でも私にとっては救いだった。

私はただこの気持ちを理解してくれる、共感してくれる人が必要だった。

でもこの事を周りに話すと責められ、煽てられ、結局は私という人間を曲げられ苦しくて
しょうがなかった。

でも、君だけは私に居場所をくれ、私という「人間」を理解してくれた。