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エピソード1. ページ1

気がつけば、辺り一面銀世界の山の中。


『ぇ…』と小さく吐き出した息は白く凍り、しんしんと降り積もる雪が顔に当たるたびに冷たくて。




呆然と立ちつくす、見るからに寒いだろって格好をした子供が困惑しているのは。

自分が行くはずだった目的の場所が、荒涼とした砂漠地帯だったから。




─なのに何故。
一人ぼっちで雪山にいるのかというこの状況が。

その子の不安をどんどん駆り立てて。
そしてそれは決壊して波のように止めどなく溢れ出す。



『……うぇええぇ…』


─いつの間にか、幼子のように、ぼろぼろと泣きじゃくっていた。

顔中汁まみれになりながら、次々にこみ上げてくる感情ごと拭い去るように。

手の甲で両側から涙を払う。




『マーリぃン…ダンさぁん…シノぉ…!』

仲間の名前を呼びながら、雪を踏みしめて歩く。
…もう一人いたような気がしないでもないが。



女神様からもらった加護のおかげで、
絹織りの半袖ハーパン、動物の皮を張り付けただけのベニヤ板並みに薄い簡素な木の鎧。

そして、袋みたいな見た目の皮の靴でも全く寒さは感じないのが、本当に幸いだった。



まあ、そんな所に気を回せるほどの心の余裕はない子供は。


いまだに泣きながら。
それでも てこてこ とゆっくり歩く。と─

『呼んだか?』と後ろから低い声がして。


驚いて、肩を震わせて思い切り飛び上がった。
猫みたいに





魔導師『…っふ…!』

勇者『マーリン…!ちょっと笑わないでよ!』

魔導師『いや、すまんな…っ。予想以上に…、飛び…っ!』


思い切りツボに入ったんだろうなあ。
なんて思えるくらいには、冷静さを取り戻した子供─もとい勇者。





いまだに後ろで くつくつ と笑うのは、


胸元と背中が大きく開いた、スリット入りのセクシーな黒いシンプルなドレス。

踵部分が細く鋭い、膝下まである黒のハイヒールロングブーツ。(※今はちょっと浮いてる)

ザ・魔女が被るイメージの強い、黒のとんがり帽子に
身の丈近くある、これまたザ・魔法使いって感じのオーソドックスで簡素な木の杖。

紫を帯びた艶やかな黒髪は、ゆるりと弧を描きながら螺旋状に体に巻き付いている。




魔導師のセクシードレスを見るたびに、チャイナドレスみたいだと思っている勇者は、
自分よりもはるかに背丈の高い魔導師のお腹辺りを ぽこぽこ と軽く叩きながら笑うことを止めるように進言する。

理由?恥ずかしいからだよ。 by思春期勇者

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作者名:前世あたりが多分、猫だった。(仮) | 作成日時:2022年3月21日 9時

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