innocent 2 (ページ9)

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イノセントアップルページ9

く、分からない。

先生、と呼べば先生は笑顔で丁寧に教えてくれて。

ありがとうございます、と言うと、
頑張って、の返答に心が和んだりして。

＊＊

『これ…全教科で何点？』

昨年四月。

新入生歓迎テスト、と名付けられたそれは、「地獄の抜き打ちテスト」であった。

そんなテストが全て返ってきた日。

我ながら酷い点数をとってしまったと反省して、
テストを親に渋々見せた。

『けっこう酷いね、これ』

母は特に怒ることはせず、ただ悲しそうに何枚かの答案用紙を見つめた。

父も特に何も言わなかった。
無言の圧が少し怖かった。

でもただ一つ、
「塾でも行ったらいいんじゃない？」と。

その一言で火がついてしまった俺は、あるいいことを思いついた。

『母さん！涼介くんってたしか塾講師だよね？その塾行こうよ！』

『え？…あ、あぁ、』

いとこで５歳上の涼介くんが先生をやっている塾があるのを思い出したのだ。

今考えれば、あの勢いも母の許可をもらう一つの要因だったかもしれない。

＊＊

そして今。

「涼介くん、全部分かんない」

シャーペンさえ置いて全て投げ出そう、なんて態度をとってみたりしてしまう。

「全部？もう辞めちゃえば？」

「ちょ、俺のこと見捨てる気？」

「ほらほら。涼介くんじゃなくて先生でしょ、あとタメ口も直さなきゃ」

塾で会う涼介くんは、親戚たちと会う時よりもいくらかだけ大人っぽく見えてしまうのがずるい。