Liar ページ38
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「伊野尾、帰るよ」
「うごけない……」
2人になってしまった。
さっきまでは俺の他に何人かいたのに、気づいたら『面倒役』を任されてしまったらしい。
酔っ払いと2人になったからには、置いて帰るわけにはいかない。
「まじでめんどくせぇ、」
「俺ん家すぐそこだから!がんばって!」
「お前も努力くらいしろ、ほら、行くよ」
「今がんばってる……」
なんとかお店から出してタクシーに乗らせる。
足元もおぼつかない彼の介護役で、自分も一応乗ることにした。
━━━
後部座席ですやすやと寝ていた彼は、着いたと呼びかけてもなかなか起きなかった。
部屋についても、玄関先に倒れ込んで動かない。
「うあー、ただいまー、家」
「絶対玄関で寝るなよ」
「わかってる、もう大丈夫、ありがと」
「うん、じゃあまた明日」
飲みすぎたのか少し頭が痛い。さっさと帰って寝よう、と玄関から出ようとしたとき。
ガチャ、と玄関が閉まる音。
気づけば、俺の右側から腕が伸びて、玄関の鍵までしっかりとロックされた。
「いや、もう帰るって」
まさか飲み直す気か?なんて思いつつ聞く。
彼は、俺の予想外の言葉を発した。
「馬鹿だねぇ、薮は」
「は?」
「俺があんなになるまで飲むと思った?」
「…………なんなの」
挑発的な笑顔に酔いはまったく見えない。
こいつ、酔ってない。
「寝込み襲おうと思った?」
挑発が止まらない。けど、
寝ぼけた顔に見とれかけたなんてことは、絶対に、絶対にない。
「1ミリも思ってない」
「へー、」
「帰る」
「待って」
後ろを向いたのに強く右手を引かれて倒れ込む。
「危な、っ」
と、見える景色がおかしいことに気付く。
「やったな、」
「なんのこと?」
すっかり俺の下に収まった伊野尾が満足気に笑う。
そして俺のネクタイを引いて。
「っ………………」
「俺は夜更かししても全然いいよ?」
急に近づいた体温が恥ずかしい。
赤面する前に、もう何も考えないことにしよう。
「お前」
「なに?」
「まじで後悔すんなよ」
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こころ(プロフ) - *Asuka*さん» もちろん頑張る!!ありがとう! (2018年9月15日 19時) (レス) id: f9fb4ac7d9 (このIDを非表示/違反報告)
*Asuka*(プロフ) - 移行おめでと!これからもお互い頑張ろーね! (2018年9月15日 16時) (レス) id: 34b785c964 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁 | 作成日時:2018年9月15日 8時