居酒屋で会った婚約者【五条悟】

恋慕の情 ページ43

百々目鬼
四宮Aの中に入り込んでいる呪霊。
呪力量は2級ほどだが、自身の実体があった頃に呪術師から奪った目玉から術式を取り込んでいた為、複数の術式を保持。
その為階級上は特級だった。


山道を歩いた際に敗れたであろうスーツの切れ目からは本来無い筈の目が此方を見詰めている。

｢イカれているというのは無礼だな。妾の考えはお前にとっても都合がいいだろうに｣

｢生憎呪霊の考えは人間には分からないんだよ。あと、｣

何か隠してるだろ。そう言うと、百々目鬼はにたァと笑った。

｢矢張り御三家と言うのは勘が鋭いな。しかし其れがどうしたというのだ。妾が何を考えていようと、四宮 Aを守る事は変わらん。それだけで十分であろうが｣

｢それで身体乗っ取られたままだと僕が嫌なんだよ｣

1層百々目鬼の笑みが深くなる。

｢其れが惚れた弱みか？幾ら強き人の子でも恋情には絆されるか｣

一々言い方がムカつくなぁ。と思いながらも先程の不可解な出来事を整理していく。

式神が展開したものは間違いなく術式展開だろう。そしてあの式神の中身は純粋な百々目鬼の呪力の塊。
不完全な領域展開でもある程度のステータス上昇はつく。その状態で彼女を担ぎあげた時に外側から彼女に百々目鬼の呪力を流し込んだ。
呪霊は見えると言っても10年以上この界隈から離れていた椿さんはステータス上昇状態での百々目鬼の呪力に競り負けて意識を乗っ取られた。

ギリッと歯軋りする。意識を持ちながらも意識を乗っ取られる事は恐怖以外の何物でもない。
祓うと約束したのに、祓う所か体を乗っ取らせてしまうなんて事、彼女は僕に失望しただろうか。

｢…返事を聞かせて貰おうか｣

｢悪いけど、あんたの呪力のせいでついてる目玉がAさんを苦しめている事に変わりはない。アレを何とかする事と、僕達への全面協力。そしてAさんの意識解放。この3つで手を打つ｣

｢全くもって欲張りだな、しかし致し方ない。この領域もそろそろお前に競り負けそうだからな。…それで｢今は｣承諾しよう｣

そう言った瞬間沢山の目玉が見詰める空間が弾け、青空が広がる。その瞬間に彼女の体が傾いた為素早く抱える。

｢妾が内でも宿主を守っている事も理解していろ｣

そう僕の耳に囁いた半目の百々目鬼は直ぐに完全に意識を落とした。

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