信用 ページ21
彼は微動だにせず、俯いている。
その間に私は包帯を巻き直し、気味の悪い腕を隠した。
「…銀髪君。私は君ならコレがどうにかなると思っていた。でもその様子じゃ…無理なんやろうね」
彼では無理だった。彼には少々重すぎたのだろうか。
この腕を隠し、一般社会で生きたくて逃げたあの世界は、5年後には自分が次入れば死ぬ事が確定した世界に様変わりした。
もし呪術師に会えばこの腕を晒され、殺されると思った。
けれど彼なら殺されても構わないと言う心情に少なからず陥った。
だが駄目だった。私は彼の実力を少々見誤っていた様だ。
落とした右袖を拾い、ジャケットを羽織る。
「君に不快なモノを見せたこと、申し訳なく思ってる。じゃあ、達者で」
もう彼に会うことは無いだろう。そう思った。
だが、強制的に後ろに引っ張られた。
「!?」
「…別に不快とか言ってないんだけど」
銀髪君に手首を掴まれる。
彼に手首を掴まれていることが見なくても分かったのは、彼の手が私の手よりも暖かったから。
「確かにちょっと驚いたけど、どうにもならない問題でもない。それくらいなら僕が祓う」
「無理に決まってる。百目鬼は特急呪霊の中でも上位なの知ってるでしょ」
「大丈夫、僕最強だから」
《最強》
その言葉に苦笑する。まるでその言葉が私には、弱い自分を奮い立たせる為の様に聞こえたからだ。
「銀髪君個人でどうにかなる事じゃない」
「出来るよ」
「此処で気張ったって何も意味無いけど」
「だから言ってるでしょ?僕最強だから出来るんだよ」
グッと掴まれている手に力が入る。
何でこんなに自信満々に言えんの?相手が特急呪霊だって聞こえてないの?
「…信じてないでしょ」
「当たり前でしょうが」
「じゃあどーやったら信じてくれるのさ」
どうやったらって言われてもと思いながら暫く考え込み、思い付いた事をそのまま口に出した。
「なら銀髪君、君の正体を教えてくれたら信じる」
これでも12年前までは呪術界に居たから、ある程度の力のある呪術師の家名も覚えているし、呪術界の有名人もなんとなくなら把握はしている。
「…それ教えたら僕に託してくれる?」
「託すじゃなくて信じるだけ。誤変換ダメ絶対」
「…わかった」
そう言いながら、彼は付けていた包帯をゆっくり外していった。
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数学(プロフ) - 麗さん» ご指摘ありがとうございます!!すぐに直させて頂きますm(*_ _)m (2021年3月1日 8時) (レス) id: 854f7b158c (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 26ペン 七海健人 ではなく 七海建人 です。 (2021年3月1日 8時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
数学(プロフ) - shinox2さん» 全然大丈夫ですよ〜!!また読めない漢字等ありましたら何時でも質問して下さいね!! (2021年2月28日 16時) (レス) id: 854f7b158c (このIDを非表示/違反報告)
shinox2(プロフ) - ありがとうございます。ちゃんと妖怪として存在したんですね。てっきりオリジナルかと思ってました。ググればよかったですね(^^; (2021年2月28日 14時) (レス) id: 947326f28f (このIDを非表示/違反報告)
数学(プロフ) - shinox2さん» わわ!!読んで頂きありがとうございます!!コレは百々目鬼(どどめき)と読みます!!目がめっちゃついてる妖怪ですね!!ちゃんと読み仮名を付けていなくてすみません(汗) (2021年2月24日 22時) (レス) id: 854f7b158c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:数学 | 作成日時:2020年12月26日 22時