カロンの過去編 ページ9
「…そうか。でも、俺が求めているのはそういう事じゃない。
俺は元々お前を使い魔として…最強の用心棒として迎えるつもりだったんだ。
俺はラプラスの頂点に立ちたい。だけど、その結果だけがポンと欲しいわけじゃない。
ラプラスの頂点に立つために、立ち向かうべき壁を…倒すべき障害を乗り越えるための力が欲しいんだ。」
つまり、このラッセルという男は結果ではなく過程においての力が欲しいらしい。
「…何故だ？手間が増えるだけだろう。」
どうやら悪魔である彼もこのような願いは想定外らしい。
おそらく今までの契約者は楽して願いを叶えたいという者が多かったのだろう。
「悪魔の契約とは本来、そういう過程を省略していきなり金や力をポンと与えるためのものだ。」
「そうでなきゃ意味が無いんだ。俺は権力そのものが欲しいんじゃない。
マフィアも、古参議員も、俺を若造だと舐めてるやつを全員俺の力で倒して、俺のことを認めさせ、恐れさせたい…。
権力はその結果、自然とついてくるものだ。地位だけあっても、力が無いんじゃ意味が無い。」
「…ふん、つまりは権力ではなく権力を得るための武力が欲しいというわけだな。
なるほど、マフィアからみっともなく逃げ惑う情けない男にはその方が似合ってるぞ。」
「そ、それは…だからこそ、お前に協力をお願いしてるんじゃないか！
お前が用心棒にはならないというならせめて俺に何か悪魔らしい力を授けてくれ…！」
ラッセルは先ほどとは違い悪魔に懇願している。
それほどまでに周りを認めさせたいらしい。
「その権力とやらを諦めればマフィアに追われなくなるかもしれんぞ。
それでも悪魔と契約し、日常を捨ててまで権力や武力などというものを欲するのか？」
最後の警告だとでも言うように悪魔はラッセルに尋ねる。
「…そうだ。マフィア共を屈服させられないなら…ラプラスの頂点に立てないなら、それは死んでいるのと同じことだ。」
「…分からんな、なぜそこまで力にこだわる？」
「…さあね。そこまで初対面の相手に話す必要もない。」
先程までとは変わり口を閉ざすラッセル。
相手に容易には尻尾をつかませないタイプだろう。
「…まあ、いいだろう。事情はどうでもいい。
願いそのものは悪くない、シンプルで人間らしい野望だ。私はそういう願いは嫌いじゃない。
だから、お前にはお望み通り私の力を貸してやろう。」
「ほ、本当か！」
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作者名：夜桜夢遊 | 作成日時：2020年4月8日 22時
