白髪少女のトリップ記 (ページ11)

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あの晩のお話だよページ11

「分かった、わかった。興奮すると傷が開くぞ。教えてほしいことがあるなら教えてやるから大人しくしろ。どうせそれ以上失うものもないだろう。焦る理由もまたなし、だ。」
「…。」
良かった。落ち着いてくれた。
「そもそも何でスラムにいるんですの？」
「お前は悪魔と契約した犯罪者だからだ。病院に運べばそのまま警察行きだぞ。これほどの怪我を転んだ、で済ますことは出来ないだろうからな。」
悪魔のくせに優しいな。そんなことまで考えてたのか。
ていうか、悪魔との契約って犯罪なんだ。
「かといって、まさか両手両足を失った人間を道端に転がしておくわけにもいかないだろう。」
私とカロンが居なきゃ道端に転がってるっていうか海の藻屑になってたよね。
「…。あの時の事…廃ビルで何が起こったのかわたくしに分かるように説明して下さいまし！」
「あ、それは私も気になる。あんな禍々しい気配と血の臭いのセットなんて初めて感じたよ。」
「…いいだろう。だが中にはお前にとってつらい事実もあるかもしれないぞ。教えてやるのはいいが覚悟しろ。」
「わ、分かりましたわ。」
「お前は廃ビルでシビラ…バロウズ市長の秘書に言われるがまま私という悪魔を召喚し、そして殺しを願った。だが、お前は悪魔との契約がどういうものか知らないままやすやすと契約したのだ。」
ここでは市長か…。どこに行っても同じなんだな。
表情が歪みそうになるのを必死でこらえる。
「どういうものか…とは？」
「…いいか、悪魔との契約はただじゃない。契約者は必ず代償を負わなければならないのだ。」
やっぱり、代償の事を知らなかったんだ。
楽したいなんてやっぱり権力者は碌なやつがいない！
「悪魔が何を代償として奪うか…それはすべて悪魔が決めるがな。」
「…それはつまり、わたくしの両手足は悪魔の契約の代償に奪われたものだと…？それはおかしいですわ、だってわたくしは“式典走者になるために”あなたと契約したんですのよ！？代償がこれじゃあ、式典奏者どころかピアノが弾けないですわ！契約と違うじゃありませんの！」
「？ノエルは“殺し”を願ったんじゃないの？」
「こいつの言うとおりだ。お前の願いはステラステージの社長を殺す事だった。式典奏者云々は殺しの理由であって、契約ではないだろうが。式典奏者になるために両手両足を失うことになる…。その矛盾した結末が気に入ったからお前と契約してやったんだからな。」