118 リスタート ページ4
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研磨さんには退室してもらい、部屋には黒尾と2人。
何を言いに来たかは想像がつく。
黒尾「･･･A」
「･･････」
静かに黒尾は続けた。
でも、思っていたよりもそれは厳しい言葉で。
ゆっくりと私の脆い心を抉った。
黒尾「大変だったろうけど･･･
ゆっくり、ゆっくりでいいから
今の現状を受け入れてほしい」
てっきり、慰めの言葉が来ると思っていた。
お世辞でも、同情でも慰めてくれるのかと思っていた。
でも、黒尾の真剣な表情を見た私は改めて思った。
彼も医者なのだと。
だから、ずっと同情なんてしてられない。
患者である私に現実を認めさせなきゃいけない。
これは、私の髪が抜け落ちていく症状も、治療の一環だから･･･これは･････
「･･････『しょうがない』って、こと？」
目尻が熱くなるのを感じながらも、黒尾にそれを聞いた。
すると黒尾は無言で私を抱き寄せた。
黒尾「･･･『しょうがない』なんて、言いたくねぇよ。俺には分かんないほど辛いんだろうけどさ。
･･･俺も一応医者だ。これが抗がん剤の副作用で、これを乗り切らなきゃ病気は治んねぇんだ。
だから、耐えてくれ」
なんとも言えない声色で、黒尾はそう言った。
事実を突きつけられた瞬間、目からたくさん涙が溢れてきた。
感情が漏れ出してきた。
「･･････っ、くろ･･･お」
黒尾「ん？」
「や･･･っ、だよ･･･」
黒尾「･･･うん」
「髪･･･抜けるのも･･･、病気治んないのも･･･」
･････････もう･･･私は･･････
「･･････っ、全部、･･･やだ･･･っ」
たまりに溜まった悲しみを、全部ぶちまける。
こんな身体になってしまった自分へ。
自分を陥れる病気へ。
姿が変わり果ててしまう薬へ。
すべてへ。
行き先のわからない感情をぶつけ、泣き叫ぶ。
声が枯れそうになるぐらい、泣いて泣いて、泣き叫んだ。
そんな私を見ながらも、黒尾優しく抱きしめてこう言った。
黒尾「俺がいるから。
俺が、絶対治してやる」
自信に満ち溢れたその言葉は、バカバカしいけど頼もしかった。
私は、ゆっくりと顔を上げて笑顔を作る。
「･･･ありがとう、黒尾」
またひとつ、壁を乗り越えた。
今日からが、私のリスタートだ。
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玲乃 - 初見です。失礼します！2015年からのコメントあって他人ながら「愛されている小説なんだなぁ」と思っています。素敵な小説の更新を気長に待っています！ (2022年1月5日 22時) (
レス) @page13 id: 7226c025a1 (このIDを非表示/違反報告)
みーみー - はじめまして。この話､とても心に刺さりました！続き待ってます！ (2021年10月27日 17時) (レス) @page13 id: 2fe788064b (このIDを非表示/違反報告)
奏(プロフ) - こんにちは 初コメです。このお話好きです！実は私もちょっとした病気なので…続き待ってます (2021年7月10日 14時) (レス) id: 10889d7f5e (このIDを非表示/違反報告)
闇波瑠(プロフ) - やっぱり何回も見に来てしまいます！出来れば続きがみたいですが…更新待ってます！！ (2021年2月1日 1時) (レス) id: a655571041 (このIDを非表示/違反報告)
愛甘(プロフ) - 涙が……。病院について全然わからなかった私ですが、とても面白いです！好きです!!お体に気をつけて。更新楽しみにしてます！ (2020年5月30日 14時) (レス) id: 93aef9f3cf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紗乃みこ
| 作成日時：2016年6月5日 21時
