可能性はfifty-fifty

UNTITLED ページ7

今日も私はイベントを走る。
だがキャラガチ勢な私にとって「石を使ったマラソン」は正直つらい。ガチャ回したい。
そして週末はイベントだ。この前のビビバスとのコラボが好評で、じゃあもう一回しましょうかとなり今に至る。
＿＿私はもう1つ、気になることがあった。

楽曲の話をしていたあの後、杏とこはねから「一緒にユニット活動しないか」と誘われたのだ。
…勿論、Vivid BAD SQUAD＿＿ビビバスとして。

すぐに答えを出すのは難しいのでこの件は保留になったが。
そんな私は今、スマホはオート周回、パソコンは作曲の二刀流でそれぞれ進めていた。
「＿＿♪…」
声は出せるようになるまで回復したが、また大声で歌うと本末転倒なので小さな声で歌いながら作曲を続ける。
「…またお前か」
それは彰人がここ屋上に来るまで続いた。

「…彰人さん」
「声出して大丈夫なのかよ」
「大声でなければ大丈夫です」
何で屋上に来たんだろうな、なんて考えながらヘッドホンを付け直そうとすると目の前から「おい」と言われ、私は手を止めた。
「…この前は、悪かった」
この前…あぁ、初めてKIYOTAとして会ったあの時か。
「…いえ、私も変な意地を張ってすみませんでした」
「この前と変わって許してくれるんだな」
「はい、もう一度一緒にライブをするんですから」
そう言って私は視線をパソコンに戻す。
「また作曲か?」
「まぁ、そんなとこです」
画面の楽譜と睨みあう。
曲の構成としては上出来だ。だが、何か、足りない。
何かが足りないのだ。
「彰人さん、これ聞いてください」
彼にヘッドホンを渡し、私はその音楽を再生した。
「何が足りないと思いますか」
「…知らねえ」
ああやっぱりこの人にも分からないのか。取り敢えず保存だけして、パソコンを閉じた。
何が足りないのだろう、そう悶々と考えながらヘッドホンを外す＿＿

「＿＿!＿＿♪」

＿＿と、衝撃を覚える歌声が鼓膜を刺激した。
その声が発されているのは目の前にいる彼で。
どう歌えばいいのか、聞き手の盛り上げ方を分かっている歌い方だ。
…初めて見た。
暫く彰人の歌声に聞き入る。
「…凄い」
素直な感想が零れ落ちる。
だがそんなことはどうでもよかった。

私はたった今、他人の発する歌声に初めて惚れたから。



それは、ライブまであと3日の昼休み、屋上での出来事。

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