可能性はfifty-fifty

今日は7月6日、気持ち悪い程の晴天である。 ページ27

『生放送てんこ盛り過ぎ…!?運営様には感謝ですね!』
リミックスしながら生放送を見ていたが、運営の対応や企画には中々頭が上がらないというのを改めて再認識した放送だった。これが所謂「神運営」というものなんだろう。

…その後生放送の情報に頭が持っていかれ、徹夜してしまうのだ。

「…ふぁ」
欠伸がなかなか止まらない。屋上で一休みしようと足を運んだが、そこにはもう先客がいた。
「眠たそうだな」
「生放そ…リミックスしてたら徹夜しました」
「嘘つけ、昨日SNSで滅茶苦茶呟いていたじゃねえか」
「…彰人さん、眠たいです」
だろうな、と彰人はため息をついて「ん」と隣に座るように促してきた。
隣に座ると、彰人は私の肩を掴んで＿＿

何これ、膝枕?
二次創作とかでしか見たこと無いんだけど。
「寝てろ」
「べ、別にこの方法じゃ無くても良いじゃないですか」
「いいから、寝てろ。10分前に起こしてやるから」
起き上がる気も失せるような優しい声色で、私はつい、意識を手放してしまった。



＿＿普段あまり愛想無いけど、寝顔は可愛らしいんだな。
何てオッサンが考えそうなことを思いながら、Aの寝顔を見ていた。メガネは邪魔だろうと、顔に手をかけて眼鏡を外してやる。
本人曰く「もう顔バレしているから」メガネをかけているらしい。だからこんな淵のある眼鏡かけてるんだな、と一人で納得した。
オレはスマホを開き、いつも使っている音楽視聴サービスのアプリを開く。【最新】のカテゴリには「KIYOTA」と書かれてあって、無条件にそこをタップした。
…リミックスしていた、というのは本当のようで。
最新のj-popをクラシック風にしているものが見つかった。

『クラシックはあまり聞かないので…これが為に滅茶苦茶聴いて前々から準備していました!良ければお聴きください☆』

＿＿…こいつ、オレみたいだな。
表面ではかぶってて、オレらの前になると愛想もないし。
何て思いながら再生ボタンを押す。
オレの膝ではAが気持ち良さそうに寝息を立てて眠っている。
音楽の事になるととても楽しそうに、かつ誰よりも真剣に取り組むのに、いざ自分の事になると抑え込もうとする。
そんな姿を見て、無意識に支えてやりたいと思ったのかもしれないな。
今では＿＿惚気る気はないが、自分でも思うよりAの事を好きかもしれない。
イヤホン越しにクラシック風の音色が心地よく響く。
顔にかかっている髪を払ってやって、オレは真っ青な空を見上げた。

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