第8話 伊之助 ページ10
葉月花火は残酷な技と言える。突きをした後、鬼の体は粉々になり四方八方へ飛んでいく。その姿が花火のようで付けられた名らしい。
あの人は――――――師匠は下弦の鬼になっていたのか。馬鹿だ。誰よりも、鬼を憎んでいたはずなのに。何故師匠は鬼に堕ちた?
「まあ考えていても仕方がないね」
怒りに任せ、少しの情報のみで鬼を斬ってしまった。師匠の情報はもう少しほしかったところだ。
そういえば、あの羽織りを子供たちに掛けたままだったと思い出す。あの子達は屋敷の中に入ってきてしまったから、あの羽織りもそこにあるのだろう。あの人との唯一の繋がりで、最も忌むべき羽織りだ。大切なものなのだから手元に置いておくべきだったかもしれない。
待っていてくださいね、師匠。貴方の弟子である僕が、貴方を一番憎んでいる僕が、貴方を殺してあげますから。
あの頃の記憶が甦り衝動のまま壁に拳を叩きつける。殺すんだ、自分が。絶対にあの人を!!
ふと顔をあげる。何と言われれば分からないが、何となく雰囲気が変わった気がする。部屋の?いや、恐らくこの屋敷全体だ。
……勝ったのか、炭治郎。
さて、早く出ないと。下弦の鬼である時点で他の鬼より強い。元剣士であるなら尚更機動力がある。自分はもっと成長しないと師匠には勝てない。
炭治郎についていけばたくさんの強力な鬼に出会えるだろう。彼は残酷で美しいほどの運命を歩んでいるから。
ああ、そろそろ出口だ。……何やらえげつない音が聞こえる。素手で戦っている音だ。
「ちょっと……落ち着けっ!!!」
外に出て始めに見たもの、炭治郎の頭突き。
相手はあの時てる子を踏みつけた猪を被っている子だ。
頭突きの音が分かるぐらいえげつなかったが、大丈夫だろうか。頭骨折れてない?
その頭突きの衝撃で猪の頭の被り物が落ちる。付けていたのは色白で大きな瞳を持つ、まるで女の子のような男の子。衝撃の事実だ。
炭治郎はもう攻撃しないらしい。彼は素直だから、男の子だと分かっていてももう傷つけたくはないとでも思っていそうだ。
猪の彼は嘴平伊之助と言うらしい。聞いたことのない名だ。伊之助はそのうち炭治郎の頭突きで脳震盪を起こし倒れてしまった。
「あはは…!竈門君は本当に面白いねぇ」
炭治郎たちはこちらを見る。
「良かった。無事だろうか心配していたんだ」
額を触られていた炭治郎のところに行く。てる子ちゃんたちの兄もちゃんと見つかったらしい。良かった。
あの子達には苦しい思いをさせたくなかったから。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!考えてくださった設定があるからこその作品です!書かせていただきありがとうございました!これからも頑張るのでどこかの作品でまた会えたら嬉しいです! (2020年3月24日 1時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!とても読み応えのある作品で次の更新はいつかといつもワクワクしながら待ってました!笑 これからも頑張ってください!!応援しております!! (2020年3月24日 1時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 埋夜冬さん» いえいえ、此方こそわざわざ済みません、そうでしたか別物だったのですね、テスト勉強頑張ってくださいこれにて失礼いたします (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - スノーさん» ごめんなさい!善逸君の名字間違っておりました!すぐに訂正します!指摘ありがとうございます!月の呼吸はフォロワー様から案をいただいたもので、そのフォロワー様もアニメ勢なので別物です。紛らわしくてすみません! (2019年11月26日 22時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - コメント失礼します、善逸の名前ですが確か我が妻と書いて我妻だったような気がします、それとアニメ勢なら知らないのは仕方ありませんが月の呼吸なるものは原作に出ておりその中でも重要な呼吸でして、それとも原作の月の呼吸とは別の物でしょうか?長文失礼します (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年11月3日 0時