第7話 爺鬼 ページ9
相変わらず出口に近づく様子もない。周辺に人の気配はしないし、鬼とも会わない。
「竈門くんや我妻くんは大丈夫だろうか?……まあ、彼らなら心配なさそうだけど」
善逸は眠れば強い。炭治郎は家族に関係すれば強い。だから大丈夫だな。
自分は、これがあれば強くなる、限界を突破できるなんてものがあるのか。今のところ大切なものは全く思い付かない。
だって、大切にしたいものは全て消えてしまった。
髪で隠れている義眼を手で押さえる。当時の記憶が溢れてきそうで必死に止めた。駄目だ。
どこかで「まぁだだよ」と聞こえてきた気がした。そうだ。まだだったのだ。あの時出なければ皆と――――。
「ッ!!?」
寸でのところで避ける。先程までAがいた位置は殴られてへこんだ。右腕だけ筋肉が発達し、全体的にアンバランスな鬼が殴りかかっていた。避けていなかったら完全に潰されていただろう。
「チッ!避けやがった」
「僕はもう死にたがりではないからね。命が危うかったら避けもするさ」
避けるな、なんてまるで師匠のようだ。何度死にそうになったことか。
2匹目の鬼だ。すぐに殺さず情報を集めなければ。少しは話を理解できる鬼であればいいのだが。
「ねぇ君、鬼について教えてよ。例えば十二鬼月とか。あとはそうだな……満月の羽織を着た爺さんの鬼の情報でもいいよ」
「はぁぁ?」
その鬼は何言ってんだコイツという顔をした。敵に敵の情報をくれなんて、やるわけないだろうが。そもそも十二鬼月なんて、畏れ多くて会話すことも出来ない。
だが、満月の羽織を着た爺鬼のことなら知っている。
「………あぁ、お前もしかしてあのジジイの弟子かぁ?義眼の死にぞこないだろ!かわいそうだなぁ!父親代わりが鬼になっ――――」
瞬間、鬼は飛んだ。完全に
「吐け、その鬼の情報を、今すぐに」
飛んでいって床に横たわった鬼を踏みつけ、喉元ギリギリに刀の切っ先を下ろす。
「何だよ。父親探しか?誰が教えるか」
冷ややかな目をしたAは最小限の動きで刀を振るう。筋肉に覆われていた右腕が消滅した。
「あ″あ″あぁぁぁぁぁぁ!!」
「もう一度聞くよ。その、鬼の情報は?」
「っ、う、噂じゃ下弦の鬼になったとか…!」
下弦の鬼だと?あり得るな。
「そうか。ありがとう」
微笑んだ彼は。
月の呼吸 捌ノ型・葉月花火
呼吸のなかで最も痛い突きをした。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!考えてくださった設定があるからこその作品です!書かせていただきありがとうございました!これからも頑張るのでどこかの作品でまた会えたら嬉しいです! (2020年3月24日 1時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!とても読み応えのある作品で次の更新はいつかといつもワクワクしながら待ってました!笑 これからも頑張ってください!!応援しております!! (2020年3月24日 1時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 埋夜冬さん» いえいえ、此方こそわざわざ済みません、そうでしたか別物だったのですね、テスト勉強頑張ってくださいこれにて失礼いたします (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - スノーさん» ごめんなさい!善逸君の名字間違っておりました!すぐに訂正します!指摘ありがとうございます!月の呼吸はフォロワー様から案をいただいたもので、そのフォロワー様もアニメ勢なので別物です。紛らわしくてすみません! (2019年11月26日 22時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - コメント失礼します、善逸の名前ですが確か我が妻と書いて我妻だったような気がします、それとアニメ勢なら知らないのは仕方ありませんが月の呼吸なるものは原作に出ておりその中でも重要な呼吸でして、それとも原作の月の呼吸とは別の物でしょうか?長文失礼します (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年11月3日 0時