第4話 鼓の音 ページ6
炭治郎が扉を開ける。もう使われていない錆びた瓶、消えそうな照明、すべてが恐ろしい雰囲気に荷担している。
善逸は先程からずっと「炭治郎…俺を守ってくれるよねぇ?」と泣き言を言っている。もともと怖がりなのだ。自信を持っていない辺りが、眠ったら強いことを知っているAは面白かった。
「善逸、ちょっと申し訳ないが前の戦いで俺は、肋と足が折れている。そしてまだそれが完治していない」
「それはまた……重傷だね。痛そうだ」
炭治郎は自分と同期の隊士だ。彼が強いのは分かるから、よほど強い敵と渡り合ったのだろう。確か、目と鞠の鬼だったはずだ。
Aは考えながら眉を寄せた。なんとも怖い運命の持ち主だ。
「え、えぇ!?何折ってんだよ骨!折るんじゃないよ骨ぇ!」
突然善逸が叫び始めた。はじめから守られる気満々の隊士なんて、善逸が初ではないだろうか。だがやはり面白い。
だがまあ、鬼がいるとわかっている室内で叫ばれるのは敵に位置を知らせているようなもの。それは少し困る。
「善逸、静かにするんだ。お前は大丈夫だ」
「そうだよ我妻くん。君は出来る子だからね」
「気休めは止めろぉぉ!」
すごい暴れ具合な上に顔もとんでもなくなっているがいいのだろうか。もともと突っ込み担当ではないAは、善逸は体が柔らかいんだなぁとボーッと考えた。
「ッ、駄目だ!」
「おや」
炭治郎の目線の先には先程の子供たち。室内に入ってきてしまったようだ。
炭治郎の置いてきた木箱からカリカリ音がするのが怖かったらしい。
「だからって置いてこられたら切ないぞ!あれは俺の命より大切なものなのに」
その言葉に、Aは目を細めた。
「大切、ねぇ……」
途端、ガラガラと崩れる音が響いた。怯える善逸のお尻に押され、炭治郎とてる子とAが別の部屋に入る。
ポン、という鼓の音。閉まる襖と変化していく部屋。明るめの部屋で音が止まった。
てる子を落ち着かせた時、炭治郎の鼻が反応した。Aも眼光を鋭くし、戦闘態勢を取る。炭治郎にてる子を守らせたとして、動けるのは自分だけだ。
ドスンと大きい足音。Aでも分かる。こいつは、この屋敷の主だ。
叫ぼうとするてる子に指示を出した炭治郎は棚の影に隠れるよう言う。
「A」
「分かっている。てる子ちゃんを守りつつ任務開始、だろう。準備は出来ている」
ブツブツを何か呟いている鬼を睨み、彼らは刀に手を掛けた。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!考えてくださった設定があるからこその作品です!書かせていただきありがとうございました!これからも頑張るのでどこかの作品でまた会えたら嬉しいです! (2020年3月24日 1時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!とても読み応えのある作品で次の更新はいつかといつもワクワクしながら待ってました!笑 これからも頑張ってください!!応援しております!! (2020年3月24日 1時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 埋夜冬さん» いえいえ、此方こそわざわざ済みません、そうでしたか別物だったのですね、テスト勉強頑張ってくださいこれにて失礼いたします (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - スノーさん» ごめんなさい!善逸君の名字間違っておりました!すぐに訂正します!指摘ありがとうございます!月の呼吸はフォロワー様から案をいただいたもので、そのフォロワー様もアニメ勢なので別物です。紛らわしくてすみません! (2019年11月26日 22時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - コメント失礼します、善逸の名前ですが確か我が妻と書いて我妻だったような気がします、それとアニメ勢なら知らないのは仕方ありませんが月の呼吸なるものは原作に出ておりその中でも重要な呼吸でして、それとも原作の月の呼吸とは別の物でしょうか?長文失礼します (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年11月3日 0時