第3話 屋敷 ページ5
森を抜けた先には屋敷があった。なるほど、ここが目的地らしい。
炭治郎は嗅いだことのない匂いに困惑し、善逸は何か音がする、と耳を澄ました。
ああそう言えば、とAは思い出す。今回最終選別を合格した者たちは、五感のうち1つが優れていると聞いた。炭治郎は嗅覚で、善逸が聴覚。何とも面白くなりそうな予感だ。さらに言えば、Aの勘が外れたことはない。面白くなりそうな展開を予測したAはふふっと笑ったのだった。
その時、炭治郎は木に隠れるようにして恐ろしげにこちらを見ている子供たちに気付いた。近づくと余計に怯える。尋常ではない怖がり方に、炭治郎は落ち着かせるために手乗り雀を見せた。
「教えてくれ。何かあったのか?ここは君たちの家?」
子供たちは全力で否定した。
「こ、ここは……ば、化け物の家だ…!」
その言葉に一気に緊張が走る。
「兄ちゃんが連れていかれた」
聞けば、その鬼は兄だけを連れて行ったらしい。普通、鬼はあるだけの人肉を欲しがる。子供たちには目もくれず、兄だけを拐うのはおかしかった。
「ほう、兄だけを……」
Aはそれを聞いて自分が集めた情報の中から仮説を立てる。有力なのは、その兄が稀血の可能性だ。怪我をしていたなら尚更匂いが濃かっただろう。
「炭治郎、なあ、この音何なんだ?気持ち悪い音、ずっと聞こえる。鼓か、これ?」
彼らは耳を澄ませる。ポン、ポン、と響いたのは鼓の音だった。Aは襖が空いている上の階を見ると、子供たちに駆け寄った。素早く羽織を取り、周りが見えないように子供たちに掛ける。
瞬間、その上の階から人が落ちてきた。
グシャリ、と地面に叩きつけられ辺りに血が飛ぶ。
「な、何!?」
うっすらとAの顔だけ見えるように羽織を掛けられた子供たちは聞いたことのない音にAを見た。
「子供には見せられない状況になっているからね。見ちゃ駄目だよ。ところで、そのお兄さんは何色の着物を着ているかな?」
「兄ちゃんは、柿色の着物を着てる」
では彼はお兄さんではない。何人も同じように連れ去られていたのだ。
満月の羽織を子供たちに貸して、立ち上がる。善逸は嫌そうだったが3人は行く決意をし、炭治郎は子供たちのために木箱を置いていった。
「何かあっても二人を守ってくれるから」
Aはその木箱に視線を送り微笑んだ。
つくづく炭治郎は面白い青年だ。彼は一体どんな未来を歩むのだろう。
3人は屋敷の玄関に向かう。任務の始まりだ。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!考えてくださった設定があるからこその作品です!書かせていただきありがとうございました!これからも頑張るのでどこかの作品でまた会えたら嬉しいです! (2020年3月24日 1時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!とても読み応えのある作品で次の更新はいつかといつもワクワクしながら待ってました!笑 これからも頑張ってください!!応援しております!! (2020年3月24日 1時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 埋夜冬さん» いえいえ、此方こそわざわざ済みません、そうでしたか別物だったのですね、テスト勉強頑張ってくださいこれにて失礼いたします (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - スノーさん» ごめんなさい!善逸君の名字間違っておりました!すぐに訂正します!指摘ありがとうございます!月の呼吸はフォロワー様から案をいただいたもので、そのフォロワー様もアニメ勢なので別物です。紛らわしくてすみません! (2019年11月26日 22時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - コメント失礼します、善逸の名前ですが確か我が妻と書いて我妻だったような気がします、それとアニメ勢なら知らないのは仕方ありませんが月の呼吸なるものは原作に出ておりその中でも重要な呼吸でして、それとも原作の月の呼吸とは別の物でしょうか?長文失礼します (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年11月3日 0時