第28話 嗤う ページ30
自然と口から笑いが漏れた。
「は、はは……!」
炭治郎の言っていることが信じられなかった。彼は藤の花の屋敷で話したAの過去を聞いていなかったのだろうか。
自分ははっきり言ったはずだ。『僕は君たちを信用していないんだ』と。
「竈門くんは案外酷い人だな。信じることができない僕に信じろと言うのかい?」
「言うさ!だから師匠を追うんだ!俺はAが師匠を倒すと信じている!」
信じている?
……そう簡単に、人のことを信じてはいけないよ。信じることより裏切ることの方が何倍も簡単なんだから。
ずっとそう思ってた。裏切ることの方が簡単だ。でも――――――。
「僕も、君が倒すと信じている」
この感情も炭治郎といたから、か。全く、面倒な感情を思い出してしまったな。
炭治郎がAの言葉に反応しAを見た時には、すでに気配は消えていた。
師匠が消えていった方向、それから速さ。あれが本気の速さではないとわかっているから、こちらは本気の速さで先回りしようと思う。
炭治郎たちといたところから随分離れた。走っているうちに広い場所に出た。そこで走るのをやめ、刀に手を掛ける。
自分の勘が告げていた。師匠の気配がここにある、と。
「全くもって成長しとらんな。だからああやって教育していたというのに、ことごとく破りおって」
闇から姿を現したのは紛れもなく師匠だ。唯一のつながりである羽織りが風に揺れる。
会えたことにも、自分の成長を否定されたことにも泣きそうだ。視界が霞む。だが泣いている暇などない。今いるのは師匠ではなく敵。鬼なのだから。
「破ってないですよ、貴方の言いつけ通り過ごしてきた。情報収集を怠らなかったから貴方が下弦の鬼として過ごしていることを知りましたし、笑って過ごしていたから鬼たちは焦って自ら墓穴を掘る。だから僕は今まで無傷で過ごせました。でも分かっていますよ。あの程度の鬼相手に戸惑っているようでは僕はまだ修行が足りない」
鞘から刀を抜く。灰色の刀身に金と銀の光が散らばっている美しい刀は、月の光を受けて淡く輝いた。
「だから貴方を倒して弱さを断つ」
Aの雰囲気が変わった。瞳孔が開き、月色の瞳が獣の眼のように光る。
地面を蹴る。土煙が舞う。先程までいた場所にAの姿はない。
キィン―――と刀の交わる音。師匠の刀とAの刀が火花を散らせていた。
Aは口を歪め、
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!考えてくださった設定があるからこその作品です!書かせていただきありがとうございました!これからも頑張るのでどこかの作品でまた会えたら嬉しいです! (2020年3月24日 1時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!とても読み応えのある作品で次の更新はいつかといつもワクワクしながら待ってました!笑 これからも頑張ってください!!応援しております!! (2020年3月24日 1時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 埋夜冬さん» いえいえ、此方こそわざわざ済みません、そうでしたか別物だったのですね、テスト勉強頑張ってくださいこれにて失礼いたします (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - スノーさん» ごめんなさい!善逸君の名字間違っておりました!すぐに訂正します!指摘ありがとうございます!月の呼吸はフォロワー様から案をいただいたもので、そのフォロワー様もアニメ勢なので別物です。紛らわしくてすみません! (2019年11月26日 22時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - コメント失礼します、善逸の名前ですが確か我が妻と書いて我妻だったような気がします、それとアニメ勢なら知らないのは仕方ありませんが月の呼吸なるものは原作に出ておりその中でも重要な呼吸でして、それとも原作の月の呼吸とは別の物でしょうか?長文失礼します (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年11月3日 0時