第16話 北北東 ページ18
朝から善逸が禰豆子を追いかけ、それを炭治郎が止めようと部屋の中を走り回っている。伊之助は縁側で「腹減った」と呟いていて、何とも自由で平穏な朝だ。ちなみにAはというと髪を結んだり義眼の調整をしている。
しばらく経つと炭治郎の鎹烏がやってきた。
「北北東!北北東!次の場所は北北東!4人は那田蜘蛛山に行け!那田蜘蛛山に行け!」
Aの目が鋭くなる。那田蜘蛛山。師匠がいると思われる場所。父親代わりを殺す場所。
「A」
炭治郎に呼ばれたので見ると、3人がこちらを見ていた。炭治郎と善逸は心配そうに眉を寄せている。
握っている拳の力を抜いて深呼吸をした。波打っていた感情は少し落ち着いた気がする。
「大丈夫だよ。鬼を殺す、ただそれだけだ。それが鬼殺隊の仕事だろう」
相手は師匠ではない鬼だ。そして自分は鬼殺隊だ。ならばするべきことは1つ。
「師匠であろうと鬼を殺すことには変わらない。心配しなくても僕は鬼に堕ちないさ」
だから進む。月の羽織りと刀を持ち、一歩を踏み出した。
「では行きます。お世話になりました」
炭治郎が手厚くもてなしてくれたおばあさんに頭を下げる。おばあさんも頭を下げる。
「では切火を」
「ありがとうございます」
後ろを向くとおばあさんは石を鳴らす。伊之助は知らなかったのか怒りだした。善逸も怒りながら説明する。伊之助は山で育ったらしいからそういったことに疎いのだろう。
「どのような時でも誇り高く生きてくださいませ。ご武運を」
お互い頭を下げてから山に向けて走る。伊之助が「どういうことだ」と聞くので説明しながら行く。
師匠は那田蜘蛛山に居るだろうか。女鬼は羽織りが一緒だと言っていた。まだこの羽織りを着てくれているのは確かだ。刀も強さもあのままだといい。それなら勝機があるから。自分は師匠が鬼になってからは迷わなかった。師匠を殺すために言いつけを守り勝負を続けたからだ。師匠を殺す、その願いが叶うとなれば普段の倍の力が出てもおかしくない。勝てる。大丈夫だ。師匠の望んでいた鬼殺隊にいるのだから、師匠を殺すことを師匠は喜んでくれる。
どちらにせよ、鬼に堕ちる気は毛頭ない。
考え方がすでに師匠に依存しているのは自分でも分かっているつもりだ。精神が危ういのも理解している。これは自分への最後の試練として受け止める。
月の呼吸を完成させるための試練。僕は貴方の意志を継ぎますよ、師匠。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!考えてくださった設定があるからこその作品です!書かせていただきありがとうございました!これからも頑張るのでどこかの作品でまた会えたら嬉しいです! (2020年3月24日 1時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!とても読み応えのある作品で次の更新はいつかといつもワクワクしながら待ってました!笑 これからも頑張ってください!!応援しております!! (2020年3月24日 1時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 埋夜冬さん» いえいえ、此方こそわざわざ済みません、そうでしたか別物だったのですね、テスト勉強頑張ってくださいこれにて失礼いたします (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - スノーさん» ごめんなさい!善逸君の名字間違っておりました!すぐに訂正します!指摘ありがとうございます!月の呼吸はフォロワー様から案をいただいたもので、そのフォロワー様もアニメ勢なので別物です。紛らわしくてすみません! (2019年11月26日 22時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - コメント失礼します、善逸の名前ですが確か我が妻と書いて我妻だったような気がします、それとアニメ勢なら知らないのは仕方ありませんが月の呼吸なるものは原作に出ておりその中でも重要な呼吸でして、それとも原作の月の呼吸とは別の物でしょうか?長文失礼します (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年11月3日 0時