第9話 憎悪 ページ11
鬼を殺した匂い。それから、深い憎悪の匂い。
にこにこと微笑んでいるAからそんな匂いがした。炭治郎は首を傾げる。
鬼を殺した匂いは分かる。が、深い憎悪の匂いは何だろう。炭治郎自身も鬼に家族を殺されて憎悪の感情は理解している。だが感じるのは鬼への恨みと言うより、もっと何か―――――。
「良かったね、てる子ちゃんたち。お兄さんが見つかったのか。無事で良かったよ」
Aはてる子と兄たちの頭を撫でる。
「ところで、僕の羽織りを知っているかい?とても大事なものなんだ」
あ、と声をあげたてる子が置きっぱなしにしてしまった羽織りを持ってくる。
「あの時、守ってくれてありがとう。置いていっちゃってごめんなさい」
「ううん、いいんだよ。ありがとう」
羽織りを受け取り袖を通す。ああ、落ち着く。やはりこれがあることで自分は鬼殺隊としている意義を見出だせる。
「あの……何かうまく言えないけど…平気?」
善逸も炭治郎と同じように感じていた、憎悪の音。いつもと変わらない微笑みだから、余計に恐怖を感じた。
「何のことかな?」
二人ともこの感情に気付いているだろう。だがあえてAは何も言わない。この子達は知らなくていい事情だからだ。
「あ、平気ならいいんだ。うん」
他人の地雷は踏み抜いたらひどいことになる。善逸は身をもって知っているからすぐに引き下がった。というか、笑っているのだが明らかな牽制を入れるAが怖かった。
話が一段落したので伊之助を寝かせ、あの屋敷で亡くなってしまった人を埋葬することにした。Aも手伝い、足が発達した鬼が汚く食っていた人だったものをなるべく集めて土に埋める。
ああ、可哀想に。お前たちは生きることが出来ただろうに。こんなところに来なければ。そもそも鬼などいなければ。何度思ったことか。
「うわぁぁぁ!!!」
「わぁ!起きた!!」
伊之助が起きたようだ。起きてすぐに騒げるとは元気だな。
先ほどから「勝負しろー!」と叫んでいるが、彼は本当に野性動物のようだ。
そして炭治郎は持ち前の天然さで伊之助を扱っていた。炭治郎的には他意はないのだろうが伊之助は単純に本能で動いているので、行動が一生懸命だ。面白い。
埋葬した人たちに黙祷を捧げ、山を降りててる子たちと別れた。稀血の兄には藤の花を炭治郎の鎹烏が渡したので大丈夫だろう。
彼らが自分と同じ運命に遭わないよう、願っている。
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埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!考えてくださった設定があるからこその作品です!書かせていただきありがとうございました!これからも頑張るのでどこかの作品でまた会えたら嬉しいです! (2020年3月24日 1時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!とても読み応えのある作品で次の更新はいつかといつもワクワクしながら待ってました!笑 これからも頑張ってください!!応援しております!! (2020年3月24日 1時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 埋夜冬さん» いえいえ、此方こそわざわざ済みません、そうでしたか別物だったのですね、テスト勉強頑張ってくださいこれにて失礼いたします (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - スノーさん» ごめんなさい!善逸君の名字間違っておりました!すぐに訂正します!指摘ありがとうございます!月の呼吸はフォロワー様から案をいただいたもので、そのフォロワー様もアニメ勢なので別物です。紛らわしくてすみません! (2019年11月26日 22時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - コメント失礼します、善逸の名前ですが確か我が妻と書いて我妻だったような気がします、それとアニメ勢なら知らないのは仕方ありませんが月の呼吸なるものは原作に出ておりその中でも重要な呼吸でして、それとも原作の月の呼吸とは別の物でしょうか?長文失礼します (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年11月3日 0時