プロローグ ページ1
最終選別の合格条件、
鬼たちは久々の人肉に喜び、鬼殺隊に入ろうとしている剣士たちは緊張で張り詰めていた。
そんな中、彼は嬉々として藤の花を越え、山に入っていく。靡く黒い羽織の後ろには、彼の瞳と同じ、まるで満月のような刺繍が施されていた―――――。
「どこだァァァ!人肉ゥゥ!」
1匹の鬼が人の匂いを嗅ぎ一段と匂いが濃いところで止まった。旨そうな匂いだ。食べればさぞ腹が満たされることだろう。
この辺りのはずなのに気配も足音もしない。だが匂いはここだ。早く喰いたい。早く、早く!早く!!!
「やあ、何をそんなに見ているんだい?」
声がした。鬼がピクリと反応する。何処だ。何処から声が響いた?
「焦っていたところで何もいいことはないよ。今宵は三日月だ。情緒があって綺麗じゃないか。上を見てごらん?」
「うるせェェ!てめぇ何処にいるんだ!?」
するとため息が聞こえた。言葉、言動すべてが何だか馬鹿にされているように聞こえ、空腹も相まってか鬼の額に青筋が立つ。
「君さぁ、鬼なら血の匂いで場所くらい当てられないのかい?それとも下級だから出来ない?」
ピキピキッ
また青筋が増える。ここの木々を全て薙ぎ倒して隠れる場所無くしてやろうか。くそっ、喰いたい!喰いたい!!何処だ人間!!!
「だから、上を見てごらんって言ったじゃないか」
あ″?と上を見る。そこには月が、否、月のように光る片目があった。彼はずっと上から、鬼が苛ついているのを見て楽しんでいたのだ。
木から音を立てずに下りる。右の十字架と房のピアスが揺れた。
「今日は三日月が綺麗だね。桜が似合いそうだ」
微笑みを浮かべている彼は戦闘する気がないのかと聞きたいくらい余裕で三日月を見上げていた。
鬼はその余裕の表情が気に入らない。その態度も、馬鹿にされたことも、空腹であることも気に入らない。喰ってやる。
「肉ゥゥゥアァァァ!!!」
地面を蹴り三日月を見ている彼に近付く。殺す。喰う。こんな奴!
「やれやれ、美しさの欠片もないね。今宵は桜が似合いそうだから、桜を出そう」
―――――月の呼吸 肆ノ型・卯月桜
刀を抜き刀身を撫でる。桜の花が舞い、花に触れた鬼の頬が切れた。
「なっ!!?」
次の瞬間、鬼は斬られていた。綺麗な裂け目だ。血が飛ぶ。桜が赤く染まった。鬼は黒い霧となり霧散する。
「ふむ、やはり桜と三日月は素晴らしい景色だ」
彼は舞う桜花と三日月を見て微笑んだ。
110人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
埋夜冬(プロフ) - 白澤 晴夜さん» ありがとうございます!考えてくださった設定があるからこその作品です!書かせていただきありがとうございました!これからも頑張るのでどこかの作品でまた会えたら嬉しいです! (2020年3月24日 1時) (レス) id: f9a8d8c7d5 (このIDを非表示/違反報告)
白澤 晴夜(プロフ) - 完結おめでとうございます!!とても読み応えのある作品で次の更新はいつかといつもワクワクしながら待ってました!笑 これからも頑張ってください!!応援しております!! (2020年3月24日 1時) (レス) id: 5742d2c832 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - 埋夜冬さん» いえいえ、此方こそわざわざ済みません、そうでしたか別物だったのですね、テスト勉強頑張ってくださいこれにて失礼いたします (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
埋夜冬(プロフ) - スノーさん» ごめんなさい!善逸君の名字間違っておりました!すぐに訂正します!指摘ありがとうございます!月の呼吸はフォロワー様から案をいただいたもので、そのフォロワー様もアニメ勢なので別物です。紛らわしくてすみません! (2019年11月26日 22時) (レス) id: 87a5a46f37 (このIDを非表示/違反報告)
スノー(プロフ) - コメント失礼します、善逸の名前ですが確か我が妻と書いて我妻だったような気がします、それとアニメ勢なら知らないのは仕方ありませんが月の呼吸なるものは原作に出ておりその中でも重要な呼吸でして、それとも原作の月の呼吸とは別の物でしょうか?長文失礼します (2019年11月26日 22時) (レス) id: a85ea00e83 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:埋夜冬 | 作成日時:2019年11月3日 0時