５８ ページ28
・
大倉くんは私に歩幅を合わせて歩いてくれた。
「大丈夫？気持ち悪くない？」
身長の高い大倉くんは、話しかけるたびに私の顔を覗き込む。
章大さんとはそんなに身長が離れていないから、そうされるのがひどく新鮮だった。
「うん、へーき。
ありがとね、大倉くん」
気分が悪くないのは本当だったから、笑ってそう答えたら
大倉くんはまた何を考えてるか分からないような曖昧な表情を浮かべて
私の頭にぽんっと手を置いた。
「また泣きそうな顔してる」
・
・
・
この人にはどうして、分かってしまうのだろう。
お酒で誤魔化したつもりだったけれど
そんなのは思い込みで。
少しでも油断したら、今日会えるはずだった彼の笑顔が瞼の裏に浮かんでくる。
「ドタキャンされたん？」
すぐに私の不安定の理由を言い当てた大倉くんに驚いて
「なんでそんなこと分かるの？」
思わずそう訊き返したら、大倉くんはニタリと綺麗な歯を覗かせて笑った。
「見てたらわかるよ。
飲み会んとき楽しそうに何回もスマホ確認してたのに、途中からいきなりスマホ見んくなって、明らかにしょんぼりしてたし」
その完璧なまでの推理に感嘆の声をあげそおうになったけれど
そこに感動してる場合ではない。
「大倉くん、人のことよく見てるんだね」
今日一度も口をきいていないのに、ましてや隣にすら座っていない人にそこまで言い当てられるなんて
もしかしたら自分は、章大さんとの関係を隠しきれていないんじゃないかって不安になってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1125人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茜音(プロフ) - えぬさん» ご指摘ありがとうございます！すぐに修正します！ (2017年11月12日 0時) (
レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
茜音(プロフ) - ひよりんさん» ありがとうございます！私には勿体無い言葉がたくさん、、！！文章がキレイだと言っていただけるのが1番うれしいのでひよりんさんのコメントを何度も読み返してしまいました。ぜひまたあそびにきてくださいね(^^) (2017年11月12日 0時) (レス) id: c4843d23a9 (このIDを非表示/違反報告)
えぬ(プロフ) - 最後の｢特別やもん｣のところの名前が反応していないです、、、！ (2017年11月11日 9時) (レス) id: 0e23a7d5b0 (このIDを非表示/違反報告)
ひよりん(プロフ) - 言葉、文章ひとつひとつが繊細でキレイで引き込まれますね。表現に幅があって読んでいて想像が膨らみます(^_^)更新、楽しみにしてます！ (2017年11月10日 4時) (レス) id: 6d3b1b35bd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：茜音
| 作成日時：2017年11月5日 20時
