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十九頁〜抑制剤3〜 ページ25
翌日より雪城は、三種類の抑制剤を常に持ち歩くようになった。
初めてのヒートがくるのは通常10代後半と言われる。しかし油断はできない。事実、早い者で13、4歳でヒートをむかえる事があるからだ。
いつどこでヒートが始まるか分からない。
気を引き締めねばなるまい。
「いってきます」
返事は返ってこない。当然だ。
むしろ空っぽの家から何かか返ってくるなんて事があれば、その方が恐ろしい。
「……バカみたい」
重たげな扉(とびら)を閉じる。
いつもと同じ朝。いつもと変わらない通学路。
なのにどうしてだろう。変わらないはずの世界が少しばかり歪んで見えた。
きっと俺は恵(めぐ)まれている。
裕福な家庭に生まれ、お金で買えるものは大方何でも手にはいった。
これといった不満はない。
なのに、満たされないこの気持ちは何だろう。
なにかが変わったわけではない。
ましてや失ったものなど何一つ無い。
ただ、ほんの少し。自分の性が現実的になっただけ。
鮮やかな青い空が嫌みのごとく俺を見下ろしていた。
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作者名:フロース | 作成日時:2019年3月4日 19時