十三頁〜これは果たして恋なのか6〜 ページ18
「でも悔しいってのはなあ。
Aの結果に意外とかショックだとかなら分かるんだよ。でも、悔しいってちょっと妙(みょう)じゃね?
南条が悔しがるほどの時間も関係性も、あるとは思えないんだよ。出会ってたったの二ヶ月だぜ?
あっ、それとも何が南条とのイベントが発生してたとか!」
「そんなものない」
「あはは……。まあ、あいつの思考回路ってブッ飛んでそうだし。俺の考えすぎかもな」
悔しいとは、言わば共感である。
つまり平助の言いたいことはおそらくこうだろう。
南条が俺の結果をまるで自分のことのように受け止め、それを悔しいと思うほどの時間もたってなければ、それほど距離も近くない。
にも関わらず、なぜ悔しいなんて言葉が出てくるのか、だ。
それはそうと平助には申し訳ないがコレ、こんなにも真剣に考える必要のある案件だろうか?
正直南条の思考なんてどうでもいいのだが。
俺としてはむしろ、こんな細かいところを指摘する平助の方がいささか奇妙(きみょう)に思える。
いや、しかし。平助は神出鬼没で自由人。猫みたいに気まぐれに生きるやつだ。
これも気まぐれのようなものだろう。
今だってフラりと俺の教室に来て……って、あれ。
「そういえば、今さらだけど何しに来たわけ?」
「あっそう、そう。次英語なんだけど辞書忘れちゃてさ。貸してくんね?」
「平助のそれは忘れたんじゃなくて、ただ単に持ってくる気無いだけだろ。」
「次は持ってこようとは思ってるんだよ。
でもさ、紙辞書って重いじゃん?
なんで電子辞書じゃダメなんだよってなんじゃん?
そうするとまあいいやってなるだろ」
「ならないよ!
それに必要なものなんだから持ってこいって!
ほらっ、ちゃんと返せよ」
「返す、返す!」
「あと、“妙(みょう)な”ところに線引くなよ」
「ああ、エ●い単語のところ?」
「わざわざ伏(ふ)せてやったのに口にするなよ。バカ」
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作者名:フロース | 作成日時:2019年3月4日 19時