戦国時代の姫君

20(半兵衛1) ページ21

あれから書庫についた私は、半兵衛さんと合流すると何故か川に連れてかれていた…
てっきり書庫の片付けでもするのかと思っていたんだけど、どうやら半兵衛さんが終わらせていたらしい
今は半兵衛さんの釣りに付き合っているところだ

釣竿を持つ半兵衛さんはずいぶんとご機嫌で音符がとんでいるみたいだ
そんなに釣りが好きなんだろうか…いや、多分違うか
この場所と、この空気が好きなんだろうな

｢ふふ…どうしたの？僕の顔に何かついてる？｣

｢！ご、ごめんなさい。じっと見てて…ずいぶんと、楽しそうだったから｣

どうやらじっくりと彼の顔を見ていたらしい。意識してなかった…！
彼はそんな私の言葉に怒ることはなく、ただ笑っていた。まぁ彼が怒っているとこは見たことないんだけど

｢うん、楽しいよ。ここにいると、ちょっとは戦のことも忘れられるしね｣

｢そうですか｣

やはり思っていた通りのようだ
それからあまり時間は経ってなかったけれど、私達の間に会話はなかった
別に話すことがなかったし、私も半兵衛さんもゆっくりしたかったからかもしれない
ただ二人とも各々好きなように過ごしていた

いつの間にか半兵衛さんは釣りを止めていて、私の方を見ていた

｢ここでの生活、大変でしょ？ちょっとは慣れた？｣

｢は、はい。いつもありがとうございます…｣

｢いいよ〜。別に畏まらなくて。ねぇ、君の世界はどんなとこなの？君の日常を知りたいな｣

半兵衛さんに聞かれて、ぽつりぽつりと私は日常を話した
今になっては大切なもの。思い出したら、すぐに帰りたくなるからあまり思い出さないようにしていたものだ

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