76話 失敗 ページ30
「ここが発信機の場所ですわ。」
八百万の発信機の元、着いた先は奴さんらが潜んでいそうな建物だった。
何かの事務所だろうか、工場だろうか。
俺は建物の脇に狭い通路に一足先に入っていった。
「此処なら見えるか？」
高い塀の上に窓があるのを見つけ、塀の上に出来るだけ音を立てないように飛び乗った。
『多分敵は沖田の"見る"場所には無いよ、其の代わり＿＿＿＿』
即あのファイルの中身を暗記しておいて良かった。彼奴の憶測は信頼に値出来る程的中するからな。
「ちょ、沖田さん…！？」
小声でそんな事をすればバレると、早く降りろとジェスチャーされる。
そんななか切島は何やらゴソゴソとし始めて俺に何かを投げつける。
「それ、暗視鏡っす！」
手元にある暗視鏡を窓に向けて暗視鏡を見る。
「やっぱり、ですかィ。」
ほらよと隣で肩車をして上に乗っている切島に渡して、緑谷は驚きで上から落ちそうになっていた。
「……沖田さん、やっぱりってどういう事ですか。」
『＿＿脳無の開発拠点になってる。』
「……俺じゃねェ、神月でさァ。」
スタッと高い塀から降りて肩車から降りた緑谷に俺たちは用済みだと伝える。
此処にはもうすぐプロヒーロー達がやって来る。と。
其の時、大きな音と風が俺たちを襲った。
幸いにも塀は崩れておらず全員身を隠す。
「Mt.レディにギャングオルカ…No.4のベストジーニストまで…！」
「虎さんもいますわ。」
彼奴がさせたかった俺の役割とは……？
俺は脳をフル回転させ、彼奴が俺にやらせたい事を考えた。
今までの彼奴の遠回しな発言、情報が脳内を駆け巡る。
そして或るピースの欠片を掴んだ。
「っ！彼奴は俺に脳無の斬滅をさせたかったのかィ…！？」
其れに気付いたと同時に背筋が急に凍って隣に居た切島と轟の口をガッと押さえて壁に押し付ける。
「沖田さん…！？」
なんだ、なんなんだ此れは……。
幾多の戦場に赴いた俺が一瞬で死ぬ
やっちまった、失敗した…！彼奴、神月の目的は俺を使って脳無の斬滅をする事でさァ…！！
「出来れば邪魔はよして欲しかったな。」
先程より、強く感じた、此奴はやばい。
其れを感じ取ったのか、此処に居る全員が口を押さえ壁に張り付いた。
冷や汗が顔の淵を流れてコンクリートに滴り落ちる。
俺の最優先事項を忘れるな、此奴らを俺が護る事、だ。
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作者名：終夜 | 作成日時：2019年1月22日 2時
