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41話 大人から見た子供 ページ47

夜、ここに来てからは見る事が少なくなっていた夢を久しぶりに見てしまって飛び起きた。


汗の滲んだ胸元を握りしめて息を整える。


ようやく落ち着い頃に、喉が渇いている事に気が付いて他の部屋の子達を起こさないように談話室まで向かった。


談話室に入る手前、ぼんやりとした影が見えて思わず隠れてしまう。


床に沈んでいる影は激しく上下していて、激しい息遣いも聞こえた。体調が悪いのかと暗い廊下でよく目を凝らすとミルクティーのような髪の色が見えて、体が小さい事から遥だと気がついた。


遥は体の調子を崩しやすいから見ていてくれと至から言われたのを思い出して、遥に近寄ろうとすれば、掠れた声で息絶え絶えに自分に言い聞かせているような言葉が聞こえた。


「大、丈夫…大丈夫だからっ。まだ、ま、だ、まだ死なない……。大丈夫…。」


僕は、その言葉を聞いて近づけなくなってしまった。普通なら駆け寄って抱きしめてあげるんだろうけど、僕にはできなかった。


まだ高校も卒業していない子が一人で痛みと戦って、同室の監督を気づかって談話室まで来た。足音は聞こえていたはずなのに自分の吐き出す息で音がかき消されていて僕に気が付いていなかったんだろう。


誰にも迷惑をかけたくないから誰にも何も言わずに一人で耐えている。


遥が痛みに耐えている姿を見て僕は心が痛んだ。


なんで何も言ってくれないの。なんで頼ってくれないの。そんな言葉が頭に並んだ。


ーーーー


「それで僕はそのまま遥が落ち着くまで、万が一倒れてしまった時に助けを呼ぶために離れて見ていたよ。」


グラスを傾けて話す雪白の話を聞いて絶句してしまった。


二人でバーにでも行かないかと誘われて酒を煽りながらいつものように団員たちの話をしようかと思っていたが、最近寮に住み込みで副監督をする事になった茅ヶ崎妹が最近頑張りすぎているのではないかと言う話になり、さっき雪白が話した内容に繋がった。


元々妹の方が何かを隠していたのはわかっていたし、最初は無理に探ろうとはしなかった。


だが今日、もう少し踏み込んでいればよかったと後悔した。


茅ヶ崎妹が帰ってきたときに兄の方も交えて四人で一度話をしようと思った。


隠したい事だろうが、一番頼ってほしい所を頼らないあの兄妹に思わず溜息が出てしまったがそれをみた雪白が微笑んでいた。

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作者名:終夜 | 作成日時:2017年7月18日 14時

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