35話 マゼンダの彼女 ページ41
俺は今日もマゼンダピンクの瞳の彼女に話しかけられずにちらちらと視線を送るだけだった。
「あかーし、赤葦!!!」
俺の耳元で叫んでくるのは我が主将で、遠回しに静かにしろと言うと、今日もまた茅ヶ崎のこと見てるだけなんだな〜と笑っていた。うるさいですよ木兎さん。
茅ヶ崎遥さん。どこかで聞き覚えがあるなと思い、この間の合宿の時にかおりさんや雪絵さんに聞いてみると、どうやら茅ヶ崎さんは中学で有名だった女子バレー選手だったと言う。
中学二年で県の最優秀選手賞に選ばれて、次世代の日の丸を背負うセッターになると言われていた彼女はある日突然バレー界から姿を消した。
俺と同じポジションで一つ上に天才がいると騒がれれば嫌でも耳に入るし、何より彼女の周りを"強く"するバレーに惹かれる人がたくさんいた。
どうしてこんな事を早く思い出せなかったんだろう。
俺が視線をやっている彼女はバレー選手を辞め、マネージャーとしてバレーに貢献していた。
中学の時には短かった髪も、腰の位置まで長くなっていて、当時より雰囲気も大人びていた為に全く気がつかなかった。
「あ、そうだ赤葦。今日の自主練の時に黒尾が茅ヶ崎も連れて行くからお前も来いって言ったぞ!よかったなぁ!!!」
「えっ……。」
なんだかんだ言って俺は茅ヶ崎さんにセッターについて色々聞きたかったりしたのだが、揃えば収拾がつかなくなる黒尾さんと木兎さんがいる。でも茅ヶ崎さんとは一度話してみたい。
俺は今試されているのだろうか?
だが行かなかったとしても木兎さんに強制的に連れていかれるし、茅ヶ崎さんがいるなら暴走馬のようなお二人を止めてくれるだろうと、諦め半分、期待半分で黒尾さんの誘いに首を縦に振った。
「あかーし、茅ヶ崎のトス打ったことあるか?」
「いや目の前で見たこともないのに打ったことあるわけないじゃないですか。」
超絶技巧、言うならば影山のようなボールコントロールが同時できていた茅ヶ崎さんのトスをユ○チュ○ブなどでは拝見したことはあるが、流石に目の前では見た事がなかった。
「一年の時に茅ヶ崎にトスを一回あげてもらった時、そりゃもうすげぇびっくりした!!」
こう、手元にストンって、と擬音がふんだんに使われているひっちゃかめっちゃかな説明をされる。木兎さんはあげてもらった事があるのか!?とても羨ましい限りだ。
早く彼女にセッターについて聞いてみたい。
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作者名:終夜 | 作成日時:2017年7月18日 14時