Let's spell the magic 【A3】【HQ!!】 (ページ40)

今日:29 hit、昨日:3 hit、合計:17,870 hit

34話静止するトスページ40

時計の針がてっぺんを少し回った時間。

バレー部員たちは昼食を終え、練習試合に入った。

音駒は対森然で、同時に動き出して攻撃を仕掛けてくる森然特有のシンクロ攻撃に私は注目してみていた。
もし、予選で当たることになればシンクロ攻撃は必ず護りを称している音駒にとっては強敵だと考えたからだ。

音駒が一歩リードしていてあと二点入れば一セットを取る、と言うところで私はちらりと烏野対梟谷の試合を盗み見た。

見た事はなくないが珍しい、リベロのジャンプトスからのエースのスパイク。この合宿に向けて、烏野は色々と仕上げてきているらしい。
梟谷に一泡、いや馬鹿木兎に一泡吹かせてやってほしいと思った。

梟谷からのスパイクを西谷が拾えば影山がトスをするのだが、今までに見た事がないトスの形だった。

空中で一度静止するトス。

まだ完成形ではないもののそれを見た瞬間に私は思わず立ち上がってしまい、経験を積ませるために一年生と交代して試合に出ていない海に座りなさいと静かに咎められた。

「いやいやいやいや、天才だからって……あれは、あれはないわ…。」

「たしかに、あのトスは反則技みたいなものだよね…。」

烏野はまだ完全に歯車が回りきっておらず、ジャンプトスもジャンプサーブも、シンクロ攻撃も、あのファーストテンポの速攻も、何か一つでも動き出せば回り始める歯車をとても恐ろしく感じた。

キラキラ光って見える烏野のメンバーたちの中には、まだバレーの楽しさを見つけられていない部員を見つけてしまって、思わず笑ってしまう。

だって彼もバレーの楽しさを知ればやめられなくなるから。

いつの間にやら烏野コートの方まで歩みよって近くで速攻を見ている神月にずるいと思うが私もノートにみんなの動きを纏める為に意識をノートに戻した。