33話 養護教諭 ページ39
「坂ちゃんサーブ教えて〜!!!」
この間の合宿とは違い、来た順からアップをして練習を始めるという形になっていて音駒は三番目くらいだった。
私は早めに来た学校のマネさんたちとお喋りしながらドリンクの準備をしていて、戻ってきてみれば昔からの顔馴染み、いわゆる幼馴染が練習に混じっていた。
保険医の彼は至と同い年で普段何を考えているかよくわからないのだ。
「先生って呼べ!」
みんなから坂ちゃんと呼ばれている彼は坂田神月と言う。何を血迷ったのか頭が良かったこいつは保険医になると高らかに宣言し、養護学校に通って養護教諭となっていた。
昔から頭が良く、運動ができて、顔がとてつもなくいい。よく至が愚痴をこぼしていたのを聞いていた。
「遥〜、俺の事誰も先生って呼んでくれない!」
「知るか!」
私の姿を見つけた途端にパァーッと顔を輝かせて泣き言を言ってくる神月に、早く恋人でもなんでも作ればいいのにと思った。
彼は二年前に音駒高校に赴任してきてよく私の体調を管理してくれているし、この間の合宿には来れなかったみたいだが合宿の時は必ずと言っていいほどこいつがついてくる。
それで音駒の校長や先生たちが納得しているのもまた怖い。
男にしては長い髪を揺らす神月は学校でも人気で、養護教諭だけではなく数学や他の教科も教えられるので保健室に赴くほとんどは教えてもらいに行っているらしい。
私は遠目でバレー部員たちにバレーを教えているあいつはやっぱりチートだなと少なからず苛立ちを覚えた。現役バレー部員よりも強いってどう言う事。
ようやくひと段落ついた神月が私の隣にやってきてにこにこと笑う。
「今回は俺がいるから、と言いたいところだけど今日だけしか居られないから電話してな。」
こいつもこいつで忙しいらしく、今回の合宿にも顔を出せるのは今日だけしかないらしい。
私が久しぶりに至にでもあってくればいいと言えば苦笑いで至には苦手意識を持たれているからと返ってきた。
なんだかんだ言いながら至は神月の事が好きだし苦手意識もっているんじゃなくて素直になれないだけだと私は言う。
「まぁ、お前の通知表含めて一回だけ寮に顔出すから。」
笑うこいつは実は養護教諭片手に私たちのクラスの副担任まで任されているので相当優秀なんだろうなと他人事のように考えておく。
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作者名:終夜 | 作成日時:2017年7月18日 14時