26話 優しい世界 ページ29
「え!?お前なにその顔!!」
その日、早退を決め込んで家に帰れば半休を取っていた至と喧嘩をした。
心配をさせたくなくて笑いながらえ?と聞く。
「いや、え?じゃねぇから!なにそのガーゼ!まって、まだ怪我あんじゃん!」
「喧嘩した」
そう、至と喧嘩をしてお互い殴り合いはなかったものの至が談話室へ出て行く際に逃げるのかと前に立てば腕で払いのけられてしまって筋肉が全くついていない今の体では耐えられずに、頰をぶつけたのだ。
その後至は自分でも驚いていてすぐさま謝ってきた。紬やいづみさんに説教をされていたし、私は私で左京さんと東さんに怒られていた。同じ空間で。
「誰と喧嘩したんだよ…」
やっくんは重苦しく溜息を吐いて怒らせてしまったのかと少し心配になって顔色を伺うようにやっくんの顔を覗いた。
「…お兄ちゃん」
背後からにゅっと手が伸びてきて肩を掴んで私の体をくるりと回し、頰が痛くないように顔に優しく手が添えられた。
「なに、黒尾」
「やっくんは心配してんの、俺もだけども…。
茅ヶ崎、それよりも周り見てみろ」
「歯が折れなかっただけマシだと思えよ、って…」
そう黒尾に言ってから周りを見回すとみんなお化けでも見たんじゃないかって顔をしていた。
「っあー……こっちが本性ですどうも茅ヶ崎です
んまぁ、まず隠しててごめん。ちょっと本性晒すのに抵抗があって……うん、どうも茅ヶ崎です」
なんて内心焦って意味のわからない言葉を発すると二年、一年生組が駆け寄ってきた。
「お、俺最初はびっくりして固まったけど、そっちの方が話しやすいです!!」
「俺はこっちの方がいいと思ってた」
なんて必死で口々に言われるからなんか擽ったくて、それでも胸があったかくなって。
黒尾の手の上に自分の手を重ねて頰を緩めた。
「大好きだよ、お前ら。ありがとう。」
「…なぁに、遥ちゃん滅多に出ないデレですか?」
「ほれほれ茅ヶ崎の貴重なデレだぞ〜」
「明日は雪が降るね、いや槍が降る」
やっくんと海は私の頭ををぐしゃぐしゃにした。
それを監督とコーチに写真を撮られてるなんて知らずに_______
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「お前ら準備をしろ!!」
「「すんません!!」」
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作者名:終夜 | 作成日時:2017年7月18日 14時