リナリア［短編集］

ぎゅっと 〈ジロー〉 ページ27

今年は…いや、今年も本当に寒い。

しかも、よりによってバイトが夜ごろに終わるから寒さがピーク。


でも、頑張れるのは愛する人が待っているから。


かじかんだ手でドアを開ける。


『ただいま〜』


私の彼氏は超がつくほどユルい。

だから、リビングから迎えに来てくれ、なんて思っていない。


｢あ、Aおかえり〜。お疲れ様。｣


ヒーターを独占していたものの、今まで外にいた私をヒーターの前へと手招きしてくれた。


｢寒かったでしょ。｣

『寒い〜』

｢よし、おいで？｣


女子はこういうのに弱いんだなぁ。

見るからに暖かそうなモコモコのパジャマを着た彼が腕を大きく広げる。

私は黙ってそのなかに包まれる。


『ジローあったかい。』

｢Aの為にずっと温まってたんだからなぁ？｣

『嘘ばっかり』

｢でも、Aもあったかいし俺もAとぎゅってしてるから一石二鳥じゃね？｣


しばらくぎゅっとしてると静かに寝息を立て始めた彼。

それを見てか、私も目を閉じる。



冬の二人の幸せなひととき。

あいつ 〈ともやん〉→←日常 〈エイジ〉

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す