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第四十五話「安いもんだ、腕の一本くらい」 ページ46

間に割り込んだ私は灰原を抱きかかえ、右腕を奴の口内に無理やり突っ込んだ。反射的に口を閉じた奴に、私の腕はブツンと音を立てて丸々齧り取られる。

それを合図に私は大きく息を吸った。


「爆ぜろォッッッ!!!!!」


そう叫んだ瞬間、奴の口内から凄まじい爆発音が聞こえ周囲は煙に包まれた。すぐさま体制を立て直し灰原の身体を肩に担ぎ七海のそばに近寄ると、上着の背をむんずと掴んで山の斜面を滑るように降りる。ある程度奴から離れた草葉の陰に身体を滑り込ませると、失った右腕の血液から呪符を生成し二人と自身の体に貼りつけ、そこでようやく三人で息を着いた。

力を抜いた体にどっと疲れが回って全身が重くなる。静かな空気の中、三人の荒い息遣いと遠くの方で蠢く奴の音だけが異様に大きく聞こえた。

「…Aッ、腕……が…ッ」
「……ッ、は?」

焦ったように私の右肩を見る灰原の声でようやく状況を理解したのか、七海がバッとこちらを振り返って驚愕の声を上げる。私の腕は二の腕の真ん中から下が綺麗に無くなっており、そこから鮮血がとめどなく流れ出ていた。痛みは無い。普段とは違う状況に興奮状態にあるせいか、アドレナリンが出ていて痛覚が麻痺しているのだろう。

動揺する二人に対して、私は予め用意していた細めの縄の片側を口に咥えると何重も腕に巻き付け思いっきり両側を引っ張った。痺れるぐらいに引っ張り続け血の出が少なくなったところでガチガチに結んだ後、更に止血用に呪符を生成し断面に何枚も貼り付けた。

「……さて」

そう呟き、垂れた髪の向こう側の二人の方を見ると彼らはビクリと体を強ばらせた。二人とも顔色が悪く、疲労と不安が顔に浮かび上がっている。そりゃそうだ、本来二級任務と連絡されたものが蓋を開けてみれば一級案件だったのだ、怯えもする。
その表情を見て私の覚悟はより強まった。
私は彼らをしっかりと見据えた。


「私が奴を食い止めとくから、二人には今すぐ下山して応援を呼んで欲しい」

第四十六話「自己犠牲」→←第四十四話「覚醒」



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人造人間名無し号(プロフ) - りり兄さん» ありがとうございます!マイペースに更新していきます! (10月31日 7時) (レス) id: 302ec2dd68 (このIDを非表示/違反報告)
りり兄(プロフ) - 最高です!!まじ応援してます!更新がんばってください…!o(^-^)o (10月30日 14時) (レス) @page37 id: f01e3b9817 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:人造人間名無し号 | 作成日時:2023年8月25日 15時

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