【呪術廻戦】モブ顔オタクのトリップ話 (ページ42)

今日:67 hit、昨日:32 hit、合計:21,662 hit

第四十一話「ぶっつけ本番」ページ42

「さっきからずっとフラフラしてるし、顔色も悪いよ？今から降りて車の中で待ってる？」  

そう心配そうに話しかけてくる灰原の顔に、寝台に寝かされ白い布をかけられていたあの時の彼の顔がフラッシュバックする。私はそれを振り払うように首を横に振る。

  「大丈夫ですよ、さっきまで寝てたのでまだ頭が覚醒途中なんです」  

それに顔色が悪いのはいつもの事です、となんて事ないように下手くそな作り笑いを浮かべて先に進んだ。少し上の方にいた七海の眉間のシワも、心做しか数が多いように見えた。

  「……本当に大丈夫なんですかアナタ」
 「はい」
 「………これ以上調子が悪くなるようでしたらすぐに下山して頂きますからね」  

ぶっきらぼうにそっぽを向いてそう呟くと、七海は先程よりも足を早めて階段を上っていった。その後直ぐに追いついてきた灰原と共に頂上まで辿り着くと、そこには小さな祠があった。周囲は雑草が生い茂りところどころ朽ち果て、今にも崩れそうな脆さを感じる。
  だが、それ以上にこの祠からはとてつもない呪力が放たれていた。重圧感があって、おどろおどろしい。恐らくここに産土神が＿＿＿。  

灰原が拳を構えて、七海がナタを取り出す。私はウエストバッグの中からナイフを一本取り出しつつ、足元から百円玉サイズの小石を拾い上げると二人に確認を取る。

  これを祠に当てて、産土神を外に呼び出す。  

互いに顔を見合わせて頷き合うと祠に向き直る。 
ゆっくりと深呼吸して、意を決して祠に向かって勢いよく投げつけた。  ピュッと風を斬る音が小さく聞こえて小石は祠の屋根に当たった。  その時。    

ぞくり。

    全身が粟立つような感覚。本能的な、嫌な予感。私は咄嗟に近くにいた灰原の服を掴んで、自分の後方へと投げ飛ばした。

「……は、」  

強い衝撃、揺れる視界、ミチミチミチッと肉が裂けるような小さな音。  横腹の激痛。  自分が吹っ飛ばされていることに気がついたのは、地面に叩きつけられた後だった。