第二十九話「贖罪」 ページ30
目が覚めた。ぼやけた視界。どこか見覚えのある天井の色。高専の保健室。左腕を見ると点滴が刺さってた。シャッて音が聞こえて、見たらカーテンが開けられてて硝子さんが立ってた。
「起きたか。調子はどうだ?」
硝子さんに手伝って貰って起き上がり首を縦に振る。
筋肉痛のせいか動きが鈍い。
「怪我は治したから痛む場所は無いはずだが、酷い怪我だったぞ。特にアバラはバキバキに折れてるやつが数本はあった」
近付いてきてベッドに座って、こっちを見る。
「あの廃病院から胎児に似た何かが出てきた。調べた結果人間の胎児で構成されていることが分かった。A、あそこで何があった」
胎児。人。
「ァ、あぁあ、あ……!」
脳裏によぎる鮮血。
思い出した。そうだ、私はあの時人を
「ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい…!」
頭を抱え蹲る姿に硝子さんはギョッとする。今の私にはあの出来事を説明できるほどの冷静さは残っていなかった。硝子さんはそっと背中をさすって私が落ち着くまで一緒にいてくれた。
あの日からずっと部屋に閉じこもっている。
あれから任務の詳細については聞かれず自室に戻るよう促された。部屋に戻ってきてからずっとカーテンの閉め切られた部屋の中、ベッドの上で蹲ってたまに思い出したかのように泣いている。時々七海や灰原、硝子さんが部屋の前まで訪ねてきていたが、何も返事を返さなかったせいかそのうち来なくなった。
目を瞑るとフラッシュバックするあの日の光景。
斬りつける度に飛ぶ鮮血、苦痛に歪む顔、中からでろりと流れ出る内臓。そのせいでロクに眠れなくなり、ご飯が喉を通らなくなった。
ずっと何もせず、時の流れに身をまかせている。
ただ、廃人のように、死んだように_____。
死んだように?
死んだのは被害者の人達で、私じゃない。
死なせたのは、殺したのは私。
被害者面していいのは被害者の人達で、私じゃない。
じゃあなぜ、何故私は被害者面をしているんだ?
殺してと頼まれたとしても、そこから殺すという選択肢を取ったのは私だ。私のせいじゃないと被害者面するのは違うだろ。
被害者面よりもするべき事があるんじゃないのか?
私が、私が殺した被害者達に向けて、今できること。
これ以上被害者を増やさないように、これ以上あんな辛い思いをさせないように。
私の命をもって、救える命を救う。
私なりの、彼らに対しての「贖罪」だ。
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人造人間名無し号(プロフ) - りり兄さん» ありがとうございます!マイペースに更新していきます! (10月31日 7時) (レス) id: 302ec2dd68 (このIDを非表示/違反報告)
りり兄(プロフ) - 最高です!!まじ応援してます!更新がんばってください…!o(^-^)o (10月30日 14時) (レス) @page37 id: f01e3b9817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:人造人間名無し号 | 作成日時:2023年8月25日 15時