検索窓
今日:13 hit、昨日:16 hit、合計:21,576 hit

第十四話「恐怖」 ページ15

しばらく歩いていると明らかに他とは違う雰囲気が漂う場所を見つけた。扉の先から陰鬱でじっとりとした空気が漏れ出ていて、足先がズンと重くなる。

「七海さん、ここ……」
「ええ、いるでしょう」

なんて事ないように言う七海の言葉に、心臓がドクンと大きな音を立てる。4日前、私のことを追いかけ回してきた呪霊のことを思い出した。追いかけられる焦燥感、服を掴まれた際の死の予感。たかが数日で刻み込まれた恐怖心が消えるものではない。
それに初めての実戦だ。運動も下手でまともに動けない、呪力を出力することすらままならない今の私に果たして呪霊が祓えるのだろうか。緊張と不安と恐怖心で手が小刻みに震え、刀を握り込む手に力が入る。ギュッと強く目を瞑り、心の中で唱える。大丈夫、大丈夫、大丈夫……!

すると、先程とは打って変わった私の様子に気づいたのか、七海が背中に手を置きポンポンと優しく叩いてくれた。子供をあやすような手つきで、それはまるで大丈夫と言ってくれているようで、緊張と恐怖で埋め尽くされていた心に安心感が芽生えた。

数度深呼吸をして、任務前に渡された呪具に視線を移す。私の二の腕ほどの長さの小刀。今まで生きてきた中で包丁以外の刃物を扱った事がないのでぶっつけ本番であるが……やるしかない。
小刀を抜いて鞘をスカートのポケットにしまい、空いた手でゆっくりとドアノブを回す。
一呼吸おいてから、グッと力を込め勢いよく扉を開けた。








コンクリ壁で固められた一室。周辺にはチリやホコリが舞っており、部屋の隅には蜘蛛の巣が大きく拡がっている。家具は転がっているパイプ椅子一つだけの無機質な部屋。
そんな部屋の中でも異彩を放つ物体が部屋の中心に居た。

天井の方を見ると、何も無いところから縄が生えていた。その紐の先を辿ってゆっくりと視線を下ろすと項垂れた髪の長い人。着ている衣服から、汚れたり破けたりして分かりにくいものの女性であることが分かる。
天井から生えていた縄はその女性の首あたりに下ろされていて、そこから導き出される答え。



女性は首を吊って死んでいた。

第十五話「死の気配」→←第十三話「ハッピーで埋め尽くせる程の努力未来な腕が欲しい」



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (39 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
84人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , トリップ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

人造人間名無し号(プロフ) - りり兄さん» ありがとうございます!マイペースに更新していきます! (10月31日 7時) (レス) id: 302ec2dd68 (このIDを非表示/違反報告)
りり兄(プロフ) - 最高です!!まじ応援してます!更新がんばってください…!o(^-^)o (10月30日 14時) (レス) @page37 id: f01e3b9817 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:人造人間名無し号 | 作成日時:2023年8月25日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。