03.似ている2人 ページ5
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今日に入り、犠牲者は一気に増えた。
松山の両親、山崎 連夜の3人だった。松山の両親は、松山が死んでから精神的におかしくなり、耐えきれずに首を吊った。山崎は塾の帰り道、通り魔に刺された。3人とも即死だった。
対策係は、この事実を受け止め、大平へ強く注意をした。「あの時教科書を忘れなければ」と。轟と成瀬は無言のまま、大平へ投げられる暴言を聞き流す。今ここで止めてしまえば、怪しまれる。なぜ居ないものの肩を持つのか、と。
大平は終始無言だった。
その態度に対策係の焔は腹が立ったのか、大平の目の前に行き、大平の読んでいる本を奪い取った。さすがの大平も上を向くことを得ざる負えなかった。
「ちょっと！アンタの不注意でこんなに人が死んじゃったのよ！？少しくらい真面目に話を聞こうとか思わないの！？」
「…思わないね。君だってあの日、教科書を忘れてたじゃないか。君がもし居ないものだったらどうした？無言で深山に借りるのかい？…違うだろう？一言かけないと相手に失礼だ。俺は別に見なくても良かったんだけど…松山が勝手に俺に貸しただけ」
確かに大平の記憶力は人一倍良い。学年でも成績は上位だし、何より、国語の教科書を忘れた時も、本文をまるまる、何も見ずに一語一句間違えずに言ってみせたこともある。おそらく、そういう個性なのか、本人の記憶力が良いのかの2つだった。
その言葉を聞いた焔は顔を真っ赤にし、大平から奪い取った本を机の上に投げ捨て、前に戻っていった。対策係の川神は下を向いている焔を慰め、羅翔は話を続けた。
「話に戻るぞ。松山や焔は大平に話しかけてしまった。なら、もう居ないものの意味は無いだろう。だから、大平を居ないものとして扱わない。大平、さっきの暴言を謝る。すまない」
「…羅翔はそれほど言ってないだろう？俺が謝って欲しいのは焔だけだよ。真面目には聞いてなかったけど、今……君らの話していたことは一語一句、覚えているよ」
焔は顔を上げ、大平に小さい声で謝る。大平はどうでもいいというように、窓の外を見つめる。大平を居ないものとして扱わなくとも、大平には誰も話しかけなかった。大平は名前だけでなく、文武両道、音楽、美術などの才能もあり、顔も良い。女子や先生にも人気がある。性格を除けば、26年前の生徒ーー岬に似ていた。だからこそ、岬に似ている大平には誰も話しかけなかったのだ。
犠牲者…松山 紅蓮、理恵
山崎 連夜
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作者名：ミスト | 作成日時：2018年3月18日 21時
