僕の隣に君がいるから

茂庭要 ページ20

━━━━━━━━━━━━━━━




『要、明日も仕事？』


｢うん、そうなんだ。ごめんね｣


『謝る事じゃないよ、頑張ってね。』




昨日、寝る前にそんな会話を交わしたっけ。
夫、要は職業柄休みが少なく、そして朝が早くて夜が遅い。
だから、いくら同じ屋根の下で暮らしていても共に過ごす時間は彼の愛用するボールペンやパソコンの方がよっぽど長いのだ。

もちろん、要は一生懸命働いてくれてるし私もそれは分かってはいるのだが…



『結婚記念日くらい、一緒に過ごしたかったな…。』



ポロリとこぼれる本音
慌てて口を塞ぐ
駄目だ駄目だ、今だって要は仕事を頑張ってる。
せめて私は美味しいご飯を作って彼の帰りを待つんだ
それが私に出来ること



『さて、買い出しにでも行きますか！』





奮発して美味しいお肉を買ってしまった
結婚記念日だし今日くらいいよねなんて浮かれながら少しの期待を込めて

家に着けば洗濯物を取り込み早速ご飯を炊いてお味噌汁を作る
おかずはお肉だけだと味気ないのでマッシュポテトなんかも作り先程取り込んだ洗濯物を畳む


そんな事をしていれば時計の針は8時を回っていた


やっぱり今日もいつも通りひとり飯かな
そう、立ち上がり夕飯を温め直そうとした時。



｢たっ！ただいま！！｣


『お！？おかえり！？早かったね』



思いもよらぬ出来事に動揺しつつそう返す
いつもなら大体11時頃に帰ってくるのに…



｢だって！！今日は結婚記念日じゃん！！！｣



ニカッと笑う笑顔と片手にケーキ
嗚呼、待ってて良かったななんて涙がこぼれそうになった。




━━━━━━━━━━━━━━━

孤爪研磨→←山口忠

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す