実.況してみた【実.況者】 (ページ32)

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実況32 ページ32

「…はぁ、なにやってんだろ。」
「？なんかあったの？」

机に頬杖をついて、もぞもぞと独り言を喋るとキヨが声をかけてくれる。
いつもは電話越しだったからなんだか新鮮な気分だ。

「えっ、あ、いや。何でも無いんだけど、ちょっとね。」
「なんだよ言ってくれてもいいじゃねぇか。」

にやり、目を細め笑った顔をしたキヨ。
ふとした、たった一瞬のときなのに時が止まったように見入ってしまう。

「…いや、大丈夫。それよりなんのゲームするんだろ。」
「ほんとだな。ってか、みんなの前でそれでんの？」

それ、とは、メガネにマスクといったようでまさにレトルトさんとp-pさんのようであった。
それを聞いていた牛沢がぶっ、と吹きだす。

「なんでメガネにマスクなんだよ。」(笑)
「え、っは。いいじゃん別に！」

咄嗟に牛沢へ声を出す。それを見かねたレトさんとp-pさんは苦笑い。

「まぁまぁ、いいやん。俺ら三人メガネマスク同盟って。」(笑)

間を入ったレトルトさんによって丸くおさまった。

*

あれから軽いリハーサルを終え、もうすぐに本番だ。
生放送はしたことはあるけど、公式はない。
コラボだってしたことないからなんと思われるかが不安だった。

「…何緊張してんの。」
「え。」

ふと声をかけてくれたのはキヨ。
少しムスッとしていてなんだか不機嫌そうだった。

「なんか、不安になっちゃって…。」
「だろうな。マスクしててもバレバレだぁ。」

ふっ、と鼻で笑って私を小馬鹿にする。
それを見た私は、なんだ。と逆にムスッとしてしまう。

「ほれ、肩の力抜け。」

不機嫌そうに眉に皺を寄せる私の眉間に指押し付けて止まる。
一瞬なんだか、わからなかったが途端に鈍い痛みが走る。

「ッた！なにするの？！」

「デコピンだ、デコピン。すんげぇ顔してたからさ。」

キラリと白い歯を見せ笑ったキヨは、もっかいするか？と聞いてきた。
痛いのはゴメンだけどなんだか、面白くて自分も釣られて笑う。

「ふふっ。」

「…笑ってるほうがいい。マスクで見えねえけど今の表情でありのままのお前を見せろ。

作ってるお前なんか好きじゃない。だからいつも通りやればいいだけだ。」

真剣な表情にすぐになり、なんだか告白のようなものを受ける。
周りには牛沢とかはいなくて、ふたりだけだった。

いつも遠くて、でも近いような関係なのに今だけは距離を忘れられてる気がした。