実.況してみた【実.況者】 (ページ16)

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実況16 ページ16

「…んー！はぁ、疲れたぁ。」

椅子に座りながらも、伸びをして大きく溜息をつく。人間無意識で言葉は出るものだ。
溜息の後にふと出た言葉はやはり、この一言であった。

動画を撮り終え、いくつか編集も終わったところで今日投稿する予定の録り貯めを探す。
あ、そういえば。と思いながらパソコンをいじりながら携帯を操作する。

携帯を下にスクロールしていけば、見慣れない新しい名前。
"キヨさん"と登録された彼の名前をタップすると、繋がったのかすぐにコールが始まる。

「"あ、もしもし？"」

「もしもし。キヨさんですか？」

マウスでカチャカチャしている音が部屋に響き、声もこだませずすぐに消えた。

「"キヨでーす。なんかあったんですか？"」

「いえ、特には。そういえばキヨさんの実況見させていただきましたよ。」

どことなく、楽しい雰囲気に声色を上げて話す。すると、キヨさんも同じくらいのテンションで話してくださった。

「…"え、まぢですか？俺、柳さんに見てもらえるような動画出してませんよ？"」

「ふふっ、それでしたら私もですよ？でもとても面白かったですよ。」

「"いや、あ、まぁ、ありがとうございます…？"」

ありのままの素が出たのか、地声に戻ったキヨさん。普通にどう応えたらよいのか悩んでいたのか？

そう思い、一声かける。

「褒めてるので、素直に受け取ってください。」

「"あ、あざす。それより用件ってそれだけっすか？"」

「あー…えっと、今日夜に動画投稿するっていうのを言いたくて…。」

本音を言えば、投稿したことをどうのこうの言われるのが嫌で言ってみた。

牛沢に言えば、嫌味を少し言われる。だからキヨさんはどうなのかもためしてみたかった。

「"まぢっすか！絶対に俺見ますね！何の動画あげるんですか？"」

「録り貯めしてあった、GTA上げます。お暇でしたら見ていただけると幸いです。」

電話の顔の見えない相手に微笑むようにして話をしていた自分がパソコンの真っ黒な画面に映り恥ずかしくなる。

読み込み中なのか、真っ暗で自分の顔しか見えないのだ。

「"いいってことっすよ。"」

「…ありがとうございます。じゃあ、また。」

そう言って電話を切り、動画サイトを開いた。さて、投稿するか。そう思ったとき自分の投稿より前に、キヨさんのが見たいと思い、違うワードで検索をかける。

コラボ実況は賑やかだ。感想が出ても、心に秘めておく。