episode 194 落とし物の行方 ページ44
朝目が覚めてすぐにカーテンを開けて部屋中の観葉植物にお水をあげてからコーヒーを淹れる。
これが私の毎朝のルーティーンなんだけど、今日はいつもより時間が前倒し。
あの正体不明の彼を無視して帰ってきたはいいけど、どうやら何処かで定期券を落としてしまったみたい。
「顔も浮腫んでるし、、、もう最悪、」
それにしても、あの人が言ってた名前。
「ジョングク、、、」
何処かで聞いた事あったかな。
でもどうしてもわからない。
、、、ううん。わかってしまったらいけない気がする。
いつからかわからないけど、記憶の一部が欠けている自覚があったから、それと関係してるのかな。
面倒な事には巻き込まれたくない。
ただ平和に綺麗に暮らしたい。
過去の自分が訴えるのは、誰かを傷つけたり傷ついたりするくらいなら最初から愛なんて必要ないって。
一見ネガティブだけど、それが自分自身を守る盾だった。
それくらいの大恋愛を経験した事あったんだなぁ、、、私。
その相手が誰だったのかも、私は勿論思い出すつもりもない。
「いけないっ、、、遅刻しちゃう！」
通勤途中で昨日のあの場所にも、立ち寄ったコンビニにも行ったけど結局何処にも見当たらなかった。
あーあ、、、あのパスケース気に入ってたのになぁ。
ルカ「おはようございまーす」
ｵｰﾅｰ「おはようルカさん、、あれ？何かあった？空気が重い(笑)」
ルカ「何処かで定期落としてしまって、、、すみません。」
ｵｰﾅｰ「あちゃー、、まぁそんな気落とさないで。笑」
オーナーに慰められながら迎えた就業時間。
低かったテンションも綺麗な花達に癒されて落ち着きを取り戻していく。
「あのー、、、その霞草でアレンジメントお願い出来ますか？」
何処か温かみの感じられる低めの声に振り返った。
ルカ「！！、、、貴方、、昨日のっ、、、何でここが、、？」
薄めのカラーレンズのサングラスに全身黒い地味な服装が余計にスタイルの良さを強調している。
口をパクパクさせる私の反応を見て楽しんでるな、、、この人。
「昨日、、、これ落としたでしょ」
ルカ「あ！私の定期！！良かったぁ、ずっと探してたんです、、、ありがとう＾＾」
手を伸ばそうとすると、パスケースをまた自分のポケットに隠した彼は、悪戯に笑う。
まるで小悪魔みたいに。
「・・・ただじゃ返さないって言ったら、、、どうする？」
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作者名：Apple | 作成日時：2023年1月19日 1時
