episode 190 消える恋 ページ40
重い瞼の奥に差し込む灯りと体中に感じる鈍い痛み。
今の状況を整理したいのに、何も考えられない。
ただ、ベッドの近くにいた看護師さんらしき人が急いで誰かを呼びに行った様子だけを見送って、また意識が遠くなった。
それからはっきりと目を覚ました私は、お医者さんにいくつか質問をされた。
名前は？生年月日は？ここが何処か解りますか？
起きたばかりなんだからそんなに質問攻めしないでよ、、、
包帯だらけの頭を抱えて目を擦った。
ﾄﾞｸﾀｰ「出血が酷くて一時はどうなるかと思いました、、、覚えていますか？階段から落ちて怪我をされたんですよ？非常に危険な状態でしたが、これで一安心です、」
階段？、、、ああ、、、そうだ。
ぎゅっと鋭く走る痛みと共に蘇る罪悪感に胸が締め付けられる。
看護師「ご親類の方にはこちらから連絡しましたので、少々お待ちくださいね＾＾」
親類？、、、今の私に親類と呼んで良い人は居ないんだよ、
天井を仰いで閉じた瞼の裏には、笑顔のテヒョンだけが浮かんだ。
会いたいよテヒョンっ、、、ちゃんと謝りたい。
もしかしたら、迎えに来てくれるかもしれない
＿＿＿＿＿＿＿＿なんて、
そんな淡い期待はすぐに打ち砕かれた。
「ルカさんっ！、、、私のこと、、、解る？」
勢いよく病室に入ってきたのはスーツを身に纏った、相変わらず綺麗な女性。
「、、、シンヒさん、、、」
「っ良かった！、、、本当に心配したのよ、、あ！ごめんなさい、、傷まだ痛むわよね、」
覆い被さるように抱きつくシンヒさんに笑みを返すと、申し訳なさそうに笑ってる。
「、、テヒョンは？」
思わず私が口走った彼の名前を聞いたシンヒさんは、一層暗い表情になる。
多分、良くない知らせに来たんだろうって。
こんな時だって発揮してしまう持ち前の勘の鋭さに嫌気がさす。
「あのねルカさん、テヒョンにはもう会えないわ。」
深呼吸一つ、ゆっくり息を吐いたシンヒさんは冷静だった。
そんな私も同じように落ち着いていたのは、足掻いたところで今更変わるものはない事を知っていたから。
それほど大きな存在を愛してしまったから。
「テヒョンだけじゃない、BTSメンバー全員もう貴方と会う事は許されないの、、、何も出来なくてごめんなさい」
人生をかけた恋は呆気なく終わりを告げながら、自分の心諸共、音を立てて崩れていく。
さようなら、テヒョン＿＿＿
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作者名：Apple | 作成日時：2023年1月19日 1時
