episode 112 浮き沈みする心 ページ12
いつもより早めに家事と買い出しを終わらせて、淹れたてのコーヒーと一緒にテレビ前に座り込んだ。
ルカ「うわぁ、、すごい！、、皆、、頑張って、、」
未だ芸能情報に疎い私だけど、大勢いる出演者の中からTREASUREの皆を見つけて思わず興奮してしまう。
MCさんの隣でカチカチの表情で愛嬌を振り撒くヒョンソクが可愛くて笑ってしまった。
いざ始まった途端、いつもと違うクールな彼らの姿に惹きつけられる。
宿舎ではいつもふざけてるマンネラインのジョンファンやハルトたちもすごくカッコよくて。
それに、、、ジフンの声も表情も。
今まで知らなかったジフンに釘付けになった。
それと同時に、彼らも、、あっちの世界の人なんだって痛いほど実感する。
ジフンも、、、テヒョンも。、、本来遠い存在の人。
あっという間に終わったステージの上で、手を振るジフンに手を振った。
今夜は美味しいものを用意して皆の帰りを待とう。
そう思って、テレビを消そうとした瞬間。
MC「BTSの皆さんです！」
その声に手が止まった。
ステージに上がってるのは、私がよく知っている７人。
その真ん中にいるのは、、、かつて恋人だった人。
気付いたら吸い込まれるように、画面に食らいついて見つめていた。
TREASUREとは違う、、、大人の色気を纏った彼らに全身を捕らえられたみたいで。
少し、、痩せたのかな、、ちゃんとご飯食べてる？眠れてる？
もう過去のことなのに、、、そんな心配事を並べてバカみたい。
仕事の続きをしよう。、、そう思うのに。
カメラ目線で映るテヒョンの視線に、体が疼いて動けない。
必死で隠していたテヒョンとの想い出が脳裏にじわじわと溢れ出す。
触れた指先が。感じた温もりが。囁かれた声が。
溢れて止まらなくなる。
ルカ「，私、、、何してるんだろ、、、」
ジフンの顔がチラついて、更に罪悪感に苛まれる。
自分で決めたことなのに、、、テヒョンの顔を見ただけでぐらぐらする自分の心。
これからはジフンを大切にしたいのに、、こんなんじゃ、、
私は結局自分の事ばっかりで、ジフンのこともテヒョンのことも傷つける。
中途半端なのは私自身だった。
すっかり冷めてしまったコーヒーに口をつけて。
ただ陽が沈んでいくのを眺めていた。
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作者名：Apple | 作成日時：2022年11月8日 23時
