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遂にこの日が来てしまった。
「今日はシャンパン下ろす方多いと思うのでみんな無理せず接客してください」
「タワーも出てるけど倒さないように気をつけてね」
私がこのキャバクラに居られる、私がキャバ嬢で居られる、最後の日になった。
営業前、お世話になったスタッフやキャストにはヘパリーゼとキューピーコーワを差し入れした。
今までで一番キラキラで可愛いドレスを着て、ティアラもつけてもらって、シャンパンタワーも出してもらって、本当に最後の日なんだと実感した。
営業が始まると、指名のお客様で席は満卓になって、本当に感謝感謝でしかなかった。
歌舞伎町時代のお客様もわざわざ来てくれたりして、私ってホントにみんなに愛されてるんだなって心から思った。
バタバタ色んな席を回って、シャンパンを頂いて、プレゼントまでくれる人もいて、本当に幸せ。
「Aちゃん、お客様来たからお出迎えしてくれる?」
私が直接お出迎えを頼まれることなんてないけど、最後の日だからとお店の入口に行くと、そこには大きな花束を抱えた誠也(と、丈くん)がいた。
「A、卒業おめでとう」
「え、…ホントに来たの?」
「来るに決まってるやん、最後の日なんやから」
「ごめん、…ありがとう」
「泣くなって〜、ほら、こっち向き?」
他の卓でも泣いたのに、誠也にまで泣かされるとは。
誠也は私の顔に手を添えて、お疲れ様って優しい顔で、声で、言ってくれた。
それにまた、涙が出てきて、ホント罪な男だなって思った。
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作者名:まぷ | 作成日時:2023年1月5日 22時